研究課題/領域番号 |
19K12427
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部) |
研究代表者 |
相子 伸之 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主幹研究員 (30443526)
|
研究分担者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
近藤 美麻 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 副主査 (40737590)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイクロプラスチック / ワンド / 底泥 / 淡水産二枚貝 / タナゴ類 |
研究実績の概要 |
マイクロプラスチック(以下、MPs)による地球規模の汚染が問題になっている。生態系の保全のためにMPsの分布状況、あるいは水生生物に摂取されている量とその影響を把握する必要がある。特に本研究の調査対象である淀川には河川の生物多様性にとって重要な場所であることが知られているワンドがあり、希少タナゴ類の生息場所となっている。タナゴ類はろ過摂餌する淡水産二枚貝を産卵寄主とするため、本研究では、分布するMPsがタナゴと二枚貝を含む生態系に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は二枚貝およびタナゴの稚魚へのMPsの暴露試験を行った。 イシガイでは、蛍光MPsビーズ(PE製:直径100マイクロメートル程度)を入れた水槽に1時間暴露した後に、MPsビーズの含まれない水槽に移して飼育したところ、エラでは試験開始0.5~24時間でMPsビーズはほとんど確認できなかった。一方で腸管を含むその他軟体部に含まれるMPsビーズの割合は徐々に高まり1時間後には実験系全体の8割以上を占めたが、その後は低下し24時間後には1割以下まで低下し、代わってMPsビーズのほとんどは飼育水のろ過残渣に含まれるようになった。このことからイシガイは100マイクロメートル程度の比較的大きなMPsを数時間のうちに体内にとり取り込むが、体内からは糞や偽糞として速やかに排出されることが示唆された。 また、ニッポンバラタナゴが産卵したイシガイに蛍光MPsビーズ(20あるいは100マイクロメートル程度の2種類)を暴露し、浮出した稚魚に含まれるMPsビーズを観察したところ、22個体の稚魚のうち21個体の個体ではMPsビーズは観察されず、唯一検出された1個体も腸管内から少量が観察されたことから、浮出直後の接触時に取り込んだことが考えられ、産卵母貝に取り込まれたMPsビーズがニッポンバラタナゴに移行することは確認されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
淀川の淡水域のワンドおよび本流において汚泥、二枚貝(イシガイあるいはシジミ)およびタナゴ(タイリクバラタナゴ)を採取し、マイクロプラスチックを分析した。2019年度は、100マイクロメートル以上の比較的大きなマイクロプラスチックを対象に、実体顕微鏡下で検鏡し、およびフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で同定を試み、2020年度は、顕微FTIR装置を用い、10~100マイクロメートルの微小なマイクロプラスチック分析を行った。2021年度は水槽を用いたMPsの暴露試験を中心に実施した 今般のコロナウイルス感染拡大予防対策および期間中に共同研究者が長期特別休暇を取得していることの影響で、マイクロプラスチックの同定分析や水槽での試験など予定していた一部の試験に若干の遅れが生じているため、2022年度まで試験期間を延長した。
|
今後の研究の推進方策 |
実験室等の飼育実験では、100マイクロメートル程度、あるいは20マイクロメートル程度の大小2種類の蛍光MPsビーズを用意し、水槽内でイシガイあるいはタナゴへの暴露試験を実施した。延長した2022年度にはさらに小さい粒径の蛍光MPsビーズを、タナゴや二枚貝に摂取されるMPsの蓄積性等を検証する。特に、イシガイでは不要物を偽糞として排出する特性を有するため、サイズと排出の関係などに検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大、あるいは共同研究者の長期特別休暇に伴い、試料の分析や飼育実験など一部試験に遅れが生じたため、2022年度に延長して試験を実施する。そこで、2022年度に用いる試薬や、これまで使用した粒径よりさらに小さいMPsビーズなどの必要な物品を購入する。また、共同研究者との研究打合せ等の出張に係る経費として充当する。
|