研究課題/領域番号 |
19K12432
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
天野 嘉春 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60267474)
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研究分担者 |
吉田 彬 早稲田大学, スマート社会技術融合研究機構, 次席研究員 (90707887)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CO2ネットワーク / 地域熱供給 / システム最適化 / ヒートポンプ |
研究実績の概要 |
2019年度には,論文1件,国内学会3件で成果を公表した.具体的には,未利用熱源を活用した CO2 冷媒を熱輸送媒体とする地域熱供給システムの日本への導入効果の基礎的な検討結果を日本機械学会論文として,関東都市部への導入を想定した数値解析の結果を定量的に示した. (1)機器運用に起因する年間のエネルギー消費量を従来システムと比較して約80%削減可能であり,その結果,年間のCO2排出量を約60%削減可能であることを明らかにした.すなわち,東京都市部における環境条件および需要特性においても欧州での先行研究に近い効果を発揮しうることが明らかになった.また,未利用熱源として河川水よりも地下水を利用することによる全体効率向上の割合を定量的に示した,特に夏期には提案システム全体の効率(COP) が,従来システム用の空調設備に比べて 2 倍程度高いことを明らかにした. (2) ネットワークから供給される 冷媒としてのCO2 と既存ヒートポンプの冷媒 R410A が熱交換する接続形態と,CO2 を分散ヒートポンプの冷媒として直接利用する接続形態とでは,CO2 を分散ヒートポンプの冷媒として直接利用する接続形態の方が,エネルギー消費量が低いことを明らかにした. 国内学会では.需要の冷温熱量比に応じた最適な分散ヒートポンプの接続形態および動作点を導出した結果を発表した.ここでは,需要の冷温熱量比(冷/温)が1.13以上のとき,冷房機にはCO2と室内空気が直接熱交換する接続形態が最適であり,その他の場合にはCO2を分散ヒートポンプの冷媒として直接利用する接続形態が最適であることを明らかにした. この他,従来の温水・冷水によるビル用セントラル空調システムと,温水・冷水系統以降をCO2ネットワークシステムに置き換えたシステムとの年間CO2排出量およびシステムCOPを比較・整理し,報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した内容について,着実に実行できた. 常温近傍の潜熱輸送媒体であるCO2を採用し,輸送中の熱損失を最小化する熱供給システムの最適設計指針を明らかにする.こと,および,CO2媒体を採用することで,温熱および冷熱需要の局所的な不均一性をうまく平準化させつつ,熱力学的容量を一時的な余剰エネルギーの蓄積に利用することで運用最適化への寄与を評価を実施することについては,日本機械学会論文にて成果を公開した.海外(スイス)との協力先へ研究分担者が訪問し,2019年度の研究進捗状況の共有と今後の方針についても,年度末に打ち合わせを実施した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,需要端で利用する新たに開発すべき機器のモデルを構築し,システムの振る舞いをシミュレートする環境を構築することを予定通り重点的に進めている.すなわち,制御性の評価が可能なダイナミックシミュレータを構築する. また,海外の協力先で準備している実験検討についても参加し,引き続き継続的に共同して研究を進める. また,分散エネルギーシステムを,Elementaryサイクルの重ね合わせシステムとして表現する方法論を,イタリアの研究者とともに共同して実施することを確認したが,その後の新型コロナウイルス蔓延の影響から,Web会議などを通じた情報交換を継続する予定である.
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