研究実績の概要 |
2020年度は,論文1件,国際会議発表2件発表し,ジャーナルに1件投稿中となっている. 研究の主対象であるCO2を熱輸送媒体とするエネルギー供給システムの,未利用熱資源利用に伴う外部動力とCO2の搬送動力を含むエネルギー消費量を算出するモデルを構築した.そして,未利用熱資源の利用に必要な動力を含めて熱資源の利用価値をCO2削減量の観点から推定・評価した.その結果,都市部での既存地域熱供給先として想定した,典型的な熱需要プロファイルにおいて,全揚程が50, 10, 10 mの地下水,河川水,下水にはそれぞれ5,500 ton/y (46%), 4,690 ton/y (39%), 5,070 ton/y (43%)の年間CO2削減価値があることを確認した. 比較対象とした,個別熱源システムに対しては,1,360 ton/y (17%), 540 ton/y (7.0%), 920 ton/y (12%)の年間CO2削減価値があることを明らかにした.特に,河川水,下水を熱資源とする場合には熱資源と接続し,需要家へ熱を供給する中央プラントに接続する需要家内での分散ヒートポンプは,R410Aなどの既存のヒートポンプを熱的にカスケード接続する配置が最適となることを確認した.R410Aに比べてCO2は臨界温度が低く,夏期に分散ヒートポンプのCOP(正味冷房運転)が低下するため,夏期に比較的大きい温熱需要が冷熱需要と共存するホテル,病院を需要家とする場合,オフィス,店舗を需要家とするときと比べてより全揚程の高い熱資源を利用し,より長い搬送距離にまでCO2削減効果を発揮し得ることを確認した. また,システム設計の一般化を目指し,作動媒体の異なる基本熱力学サイクルの合成によって,任意の吸収式サイクル(動力サイクル,冷凍サイクル)の構成最適化問題を統一的に記述した内容を,国際会議にて発表した.
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