研究課題
本研究では,フロア単位から,建物,そして地域全体に適用可能な,CO2を熱輸送媒体とする分散ヒートポンプシステムが,CO2排出量を最小化することに効果的であることを示し,その設計指針をまとめた.初年度(2019年度)は,未利用熱源を活用した CO2を熱輸送媒体とする地域熱供給システムの日本への導入効果の基礎的な検討結果を報告した. 2020年度には地下水等の組み上げ動力も含めた詳細検討を実施し,未利用エネルギーの種類毎に定量的な効果を提示した.また,熱力学サイクル一般の最適構成理論を構築し,サイクル構成の複雑度の指標を定義して,複雑な熱力学サイクルの理論的な検証基準を提示した.最終の2021年度は,未利用熱源の価値をエクセルギーの時間的・空間的属性として整理し,蓄エネルギー要素の最適配置問題として対象システムを考察した.そして,対象システムを導入する特定の地域において年間CO2排出量が最も削減される未利用熱源と需要特性との整合条件を明らかにした.未利用熱源のエクセルギー量を整理した結果,都内の場合,年間にわたり下水と地下水のエクセルギーが利用可能であること,また,需要特性については,冷熱需要と温熱需要が同程度の熱量発生する病院やホテル,店舗のような需要家を選択し,適切な蓄熱要素を配置することで,分散ヒートポンプ 同士で熱融通が発生し,省エネルギー効果を発揮することを明らかにした.以上より,CO2を熱輸送媒体とする第5世代地域熱供給システムは,温熱および冷熱需要の局所的な不均一性をうまく平準化させつつ,熱力学的容量を一時的な余剰エネルギーの蓄積に利用することで運用最適化への寄与が大きいことを明らかにした.熱需要特性と,地域で利用可能な未利用エネルギーや再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限利用する組み合わせを見出すことで,運用時CO2排出量を最小化する設計指針を導出した.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
The Proceedings of the National Symposium on Power and Energy Systems
巻: 2021.25 ページ: E231~E231
10.1299/jsmepes.2021.25.E231
Energy
巻: 235 ページ: 121172~121172
10.1016/j.energy.2021.121172