宇都宮市大谷町全域に散在する採石跡地は巨大地下空間を形成しており,一部の地下空間内の貯留水は水温10℃以下と非常に低温である。この低温貯留水を利用して,国内では例を見ない冷熱の地域熱供給が事業化されており,今後さらなる貯留水の冷熱源利用が期待される。しかしながら,貯留水の低温化メカニズムが解明されていないため,持続的な熱源としての利用可能性が不明瞭な状況であった。そこで本研究では,3つのテーマ「①貯留水の低温化メカニズムを解明」,「②冷熱エネルギー潜在量・利用可能量評価」,「③貯留水の再生可能熱源への転換技術開発」に関して調査・技術開発等を行い,次のとおりの研究実績が得られた。 テーマ①:地下空間貯留水の低温化は,潜熱・顕熱の両プロセスに起因するものであることが,現地調査,模型実験,数値解析等により明らかとなった。 テーマ②:大谷地域全域の地下空間を対象とする広域三次元地下水流動・熱輸送モデルを作成して,地下空間貯留水の低温保持期間を推計した。その結果,低温保持期間は20~210年と推測された。また,地域熱供給等で貯留水を無計画に熱源利用すると,低温貯留水は数十年程度で自然地下温度程度まで上昇することが明らかになった。 テーマ③:貯留水の人為的低温化技術について「貯留水面への送風により蒸発促進する方法」と「暖房熱源として積極的に利用して,地下空間への低温排熱と蓄熱を促進する方法」を検討したところ,後者の方がより現実的な対策であることがわかった。
|