研究課題/領域番号 |
19K12438
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池上 真紀 広島大学, 学術・社会連携室, リサーチ・アドミニストレータ― (50451547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サステイナブルキャンパス / 後進大学 / 先進大学 / ネットワーキング型大学 / キャンパスマネジメント型大学 / 内発的要因 |
研究実績の概要 |
「サステイナブルキャンパス」とは、「教育・ 研究・社会連携・キャンパス整備を通して、持続可能な社会の構築を推進する大学」のことである。「サステイナブルキャンパス」は、単なる「環境負荷の低いキャンパス」ではなく、大学全体の方針として、社会的課題に根差した教育・研究を展開し、周辺地域と調和したキャンパスを整備することで、大学が実社会のWell-beingを多面的に支えることを意味する。 本研究の目的は、わが国の高等教育機関において、サステイナブルキャンパス形成の契機となる、もしくは促進させる、外部要因・内部要因を解明し、サステイナブルキャンパスの形成過程を明らかにすることである。過去にサステイナブルキャンパス評価システム(Assessment System for Sustainable Campus, ASSC)に参加した大学のうち、特徴的な結果を修めた大学の現地またはオンラインでの調査を行うことで、研究を進める。2019年度は、現地調査の開始と並行して、過去にASSCの評価を実施した全大学を対象に、クラスター分析によって得意分野の傾向を把握し、4つのクラスターが特定された。2021年度までに、ASSCのすべての評価分野に対して得点が高い”先進大学”クラスターの5大学のヒアリング調査が完了した。特に、2021年度は、北海道大学でのヒアリングを追加調査し、また、サステイナブルキャンパス推進協議会の年次大会および日本建築学会の研究会「大学と地域の新たな連携―地域連携からキャンパスリビングラボへ-」で国内大学の取り組みの情報収集を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の中断期間があったため、当初の予定より遅れているが、進捗状況は下記の通りである。 クラスター分析によりまず、想定されていた発見として、すべてのASSCの評価分野について得点が高い“先進大学”、反対に得点が低い“後進大学”の2種のクラスターが特定された。新たな発見としては、日本の高等教育機関の場合、これら以外に、特定の分野で高い得点を示すクラスターが2種(ネットワーキング型大学、キャンパスマネジメント型大学)あることがわかった。これら合計4クラスターに属する大学について、大学規模を調査し、学生数で示される大学規模はサステイナブルキャンパスの活動の足かせにはならないこと、ネットワーキングや物理的環境整備の評価で優良な大学は小規模大学に多いことがわかった。 北海道大学は先進大学のクラスターに属するが、2021年度にサステイナビリティ推進機構を立ち上げ、キャンパスマネジメントに限らず大学をあげてSDGs達成に寄与するべく体制を強化している。CENSUSの閉鎖やサステナビリティ・ウィークの中止など、教育およびアウトリーチ活動が停滞した後、施設部の担当業務となる物理的環境整備に注力していた状況から大きく変化したといえる。全学的な組織改革を伴うこの変化は、内発的な教職員のイニシアティブが発端であったことがわかっている。停滞期間を経験しつつも、その間もサステイナビリティを追求する大学としての気風が醸成されてきたことがわかり、事例として興味深い過程である。先進大学に限らず、他のクラスターについても、このような形成過程の調査を進める。
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今後の研究の推進方策 |
全体計画について以下のとおりとする。クラスター分析により特定された4つのグループについて、グループごとに選定した大学に調査の焦点をあてる。当初の計画では、海外の先進事例も現地調査する予定であったが、コロナ禍での制約があるため、現状得ている海外大学とのネットワークから、ウェブ上での資料収集等に切り替える予定である。国内事例については可能な限り現地調査を行う。また、最終成果として、より普遍的な形成過程の抽出のため、調査協力者によるワークショップを予定していたが、コロナ禍での制約および時間的な制約から、調査協力者へのオンラインサーベイ等の代替方法を実施する。なお、4つのクラスターを考慮した国内大学の調査先は、岐阜大学、愛媛大学、金沢学院大学、高知県立大学などが候補であるが、サステイナブルキャンパス推進協議会のネットワークを活かして調査先を決定することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年の研究中断により研究が遅れていること、コロナ禍となり海外調査が不可能となったことにより、次年度使用額生じた。今後、海外調査などは別の方法で代替し、研究・調査を進める。
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