研究課題/領域番号 |
19K12440
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 研悟 筑波大学, システム情報系, 助教 (50634169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲーミング / 電力システム / エネルギー政策 / 科学技術コミュニケーション / エネルギーシステム工学 |
研究実績の概要 |
本年度は,本研究課題の前身となるゲーミングの学習効果の最終評価をまとめるとともに,完全遠隔型ゲーミング教育を模擬する実験を行った. 1.エネルギー教育用ゲーミングの学習効果の解明 2019年度に引き続き勤務先の授業において実施してきたゲーミングの学習効果を,複数の専門家による内容分析を用いて体系的に評価した.データセットと手法をアップデートした再分析の結果, 2つの学習目標すなわち「技術選択を通じて社会からの要請に応えられるシステムを構築する視点」と「価値の対立を乗り越えて合意形成する能力・態度」が一定の割合で達成されていたことを示した.また,後者のような主観的視点に立つ学びがゲームから直接生じるのに対し,前者のような客観的視点に立つ学びがゲーム後の振り返りに依存する等,新しい知見が得られた. 2.完全遠隔型ゲーミングの評価実験 2019年度に開発したゲームは,相対での実施を想定していたため,本年度の実施は困難であった.そこで,過去に開発した別のゲームを今日の政策課題を表現できるように改良した上で,参加者同士の物理的接触を必要としない完全遠隔型のゲーミング実施環境をデザインした.さらに,学生37人を対象に,この完全遠隔型ゲーミングの評価実験を行い,ゲーム後の調査票調査をテキストマイニングにかけて,学習効果を評価した.その結果,オンラインでもある程度の学習効果は確認されたものの,議論が活発化しづらい(初対面だと特に),よい意味での緊張感が保たれづらい等の課題も見受けられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の流行が当初の見込みよりも長期化していることから,2020年度は,対面型ワークショップにかかわる一切の研究活動を停止せざるを得なかった.その意味で,当初の計画通りに進んでいるとは言いがたい状況にある. しかし,そのような中でも,ゲーミングの学習効果を実証する査読付き学術論文1本をSusitainability Science誌 (IF=5.301)に公開するとともに,完全遠隔型ゲーミング教育を模擬する実験を行い,一定の成果をえた.また,本研究課題とは別の研究テーマにおいても,完全遠隔型のゲーミング実施にかかわる知見・技術の蓄積を続けてきた.このように,社会的状況が許す限りにおいて,次年度以降につながる学術的知見を得ることはできたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の流行は当初の見込みよりも長期化しており,この先1~2年で収束するとは考えづらい状況にある.一方,エネルギー・環境政策をめぐる状況も,この1年で大きく変化した.具体的には,3E+Sのバランスから野心的な気候変動対策への転換が宣言され,政策課題の設定自体が激変した.こうした状況を鑑みて,本年度は,以下の通り計画を修正した上で研究を進める予定である. 1.ゲーム・モデルの再デザイン 気候変動政策の重視,とりわけ2030年までの温室効果ガス削減目標の上積みは,エネルギーシステムに係る諸分野に新たな政策課題を生じさせている.それらの課題は,3E+Sと呼ばれるこれまでの政策課題と強く関係するものの,取り組むべき優先順位が大きく変化した.こうした状況をかんがみて,これまでデザインしたゲームのモデルを見直し,最新の社会的状況を反映できるようデザインしなおすことにする. 2.遠隔型ワークショップの開発 2021年度は,2020年度に引き続き,完全遠隔型のワークショップのデザインを続ける.当初計画では,数十人規模の相対でのワークショップを想定していたが,計画を変更し,少人数でも遠隔にてよいものができることをミニマムアクセスとする.2020年度は,相対で実施することを想定したボードゲームをZoom経由で実施したが,今後は,はじめから遠隔での実施を想定したWebアプリケーションの開発も視野に入れる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に余剰金が生じた主な理由は,COVID-19の影響による計画の遅延ならびに学会等の中止・遠隔化にともなう旅費の減少である.一方,遠隔化に伴う消耗品の追加購入や新たな研究項目の追加による論文投稿費用の増加により,物品費とその他費用は当初計画よりやや増加している.2021年度も,研究プロジェクトの主旨に照らし合わせて適正な範囲で,適宜調整を行う予定である.
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