研究課題/領域番号 |
19K12440
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 研悟 筑波大学, システム情報系, 助教 (50634169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲーミング / 電力システム / エネルギー政策 / 科学技術コミュニケーション / エネルギーシステム工学 |
研究実績の概要 |
本年度は,完全遠隔型ゲーミングの実施方法を検討するとともに,実社会の情勢に合わせたゲーム・モデルの再デザインを行った. 1.完全遠隔型ゲーミングの実施検討 完全遠隔型ゲーミングの可能性と限界を検討するため,所属機関を含む3つの大学・高専において,公共財ゲームの一種を用いる遠隔授業を行った.公共財ゲームは,本研究で開発中のゲームよりはるかに単純な構造をしており,Webアプリへの実装や参加者への説明は比較的簡単である.ただし,エネルギーシステムの具体的な政策課題を表現するわけではないため,あくまでもCOVID-19流行下の代替コンテンツとしての実施であった.結果として,完全遠隔でのゲーミング実施は,特に準備において対面よりも多くの労力を要する一方,参加者間の討論やデブリーフィングの質において対面にはるかに及ばないことが確認された.本研究では以降,対面での実施を前提とするゲームを開発し,現在の社会状況下で可能な限り多くの実践を積み重ねてゆく方針とする. 2.ゲーム・モデルの再デザイン 気候変動政策の重視,とりわけ2030年までの温室効果ガス削減目標の上積みは,エネルギーシステムに係る諸分野に新たな政策課題を生じさせている.それらの課題は,3E+Sと呼ばれるこれまでの政策課題と強く関係するものの,取り組むべき優先順位が大きく変化した.具体的には,気候変動対策をめぐる地域間の温度差,エネルギー転換のための費用の分配,再生可能エネルギー導入に対する土地制約,核廃棄物の最終処分等が挙げられる.これらの観点を織り込んだゲーム・モデルを新たに開発し,ボードゲームへの実装を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の流行が当初の見込みよりも長期化していることから,2021年度は2020年度に続き,対面型ワークショップにかかわる一切の研究活動を停止した.なお,2020年度から2021年度にかけて得られた,持続可能な社会を目指すうえでのゲーミングの役割についての知見をまとめた研究論文1編を出版した.当初予定していた期間内に成果を出すことが難しくなったため,研究期間を1年間延長した.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の流行は当初の見込みよりも長期化しているが,2022年度春時点では感染者数が減少傾向にあり,対面での活動も少しずつ可能になってきている.また、2021年度に進めていたゲーム・モデルの開発も完了し,ボードゲームとしての実装もほぼ終わっている.こうした状況を鑑みて,本年度は,以下の通り計画を修正した上で研究を進める予定である. 1.対面授業におけるゲーミングの学習効果の評価 2つの大学において,開発したゲームを用いる授業を対面にて行えることがほぼ確定している.これらの授業をワークショップに見立てて,(1) 参加者に政策課題を伝えることができたか,(2) エネルギー・環境政策に関わるアイデア創出につながったかを評価する. 2.論文執筆とゲーム出版 上記の評価内容をまとめた学術論文を執筆し,研究課題を通じて得られた知見を公表する.また,開発したボードゲームを自費出版し,研究期間終了後も活用できる体制を整える. 当初予定していた,不特定多数の参加者を想定するワークショップ実施が,進捗の遅れや社会情勢を鑑みて難しいことから,その実施に必要なゲーミングの開発と評価を本研究のミニマムアクセスに再設定する.状況が許す限り,実施機会の積み増しや専門家へのヒアリング等を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
余剰金が生じた主な理由は,COVID-19の影響による計画の遅延,対面でのゲーム評価の謝金,ならびに学会等の中止・遠隔化にともなう旅費の減少である.また,計画の変更に伴って,物品費とその他費用は当初計画より増加している.2022年度も,研究プロジェクトの主旨に照らし合わせて適正な範囲で,適宜調整を行う予定である.人件費の一部を論文執筆やゲームの出版に充てることを計画している.
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