研究課題/領域番号 |
19K12448
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (70507699)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / 沿岸域 / 砂浜侵食 / 旅行費用法 / 気候変動適応策 |
研究実績の概要 |
本年度の目的は,昨年度構築した仮想評価法に基づく評価モジュールを応用一般均衡モデル(CGE: Computable General Equilibrium)に実装するために,アンケート調査による価値推定を行うこと,および環境価値評価モジュールを実装したCGEモデルを用いて,気候変動に伴う砂浜侵食による経済被害および適応策の効果を推定することである. 第一に,砂浜の非利用価値を推定するためのアンケート調査では,気候変動に関する質問を中心に,砂浜消失を回避するための支払意思額に関して尋ねる調査票を作成した(ただし,新型コロナウイルス感染症拡大による研究計画変更により昨年度実施済み) . 第二に,旅行費用法(TCM: Travel Cost Method)で用いる砂浜訪問のための一般化交通費用を再計算しデータの更新を行った(ただし,新型コロナウイルス感染症拡大による研究計画変更により昨年度実施済み). 第三に, TCMによる砂浜のレクリエーション価値の推定,将来の気候変動に伴う砂浜侵食および社会経済の変動による経済的被害の推定,および砂浜の回復を目的とした適応策の効果の推定を行った.その結果,1)既存研究と比べて,北海道や沖縄県への出入りにおける飛行機利用や,自動車だけでなく公共交通の利用を考慮した点で既存研究より精緻化されたこと,2)同じ砂浜侵食の状況であっても,社会経済の状況の違いによって砂浜のレクリエーション価値の損失額は異なるため,この被害費用の差異が社会経済の状況の違いによる不確実性の一部であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究におけるこれまでの達成度は「③やや遅れている」と評価することができる.昨年度同様に今年度も,新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により,アンケート調査を実施することができなかった.しかしながら,アンケート調査票の設計はすでに済んでいるため,次年度にアンケート調査を実施する予定である.一方,TCMで用いるデータを更新し,改めて将来の気候変動に伴う砂浜侵食および社会経済の変動による経済的影響を評価した.なお,この結果を示した論文は国内学術雑誌で採択された.以上のことから,本研究の進捗状況はやや遅れていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は砂浜の非利用価値の実証分析,および環境価値評価モジュールを実装したCGEモデルを用いて,防災・減災の機能を活かした気候変動適応策の評価を行う予定である.特に,アンケート調査を早急に実施する.最後に,本研究全体の知見を取りまとめ,国内・海外の学術雑誌へ投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,昨年度と同様に新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により,①アンケート調査を行うことが困難だったことから,アンケート調査の実施を見送ったため,②旅費を伴う海外出張が困難だったためである.アンケート調査について,次年度にWebアンケート調査会社を通じて調査を実施する予定である.
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