研究課題/領域番号 |
19K12449
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
芳賀 普隆 長崎県立大学, 地域創造学部, 講師 (60575794)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地方自治体 / 再生可能エネルギー / エネルギー政策 / エネルギー戦略 |
研究実績の概要 |
初年度(2019年度)の取り組みとしては、第1に、公益事業学会において長崎県の再生可能エネルギーの現状と課題について報告を行った。長崎県の離島での再生可能エネルギー導入・普及にあたって、離島における電力安定供給、蓄電池の確保、洋上風力からみたFIT制度、長崎県各地でも発生している、再生可能エネルギー立地に伴う環境問題、景観問題といった観点から課題を整理した。 第2に自然エネルギー財団や公益事業学会主催のシンポジウムに参加し、再生可能エネルギーの安定供給や電力網の現状、2020年春に開始する予定の発送電分離やポストIT以降の再生可能エネルギーの普及に向けたあり方、電気事業のあり方に関する知見を得るとともに、山形県で行われたRE100におけるシンポジウムにおいて、地域(特に山形県)における再生可能エネルギー普及の現状と課題について情報収集を行った。 第3には、地方自治体のエネルギー政策を都市経営の観点から検討するとともに、エネルギー戦略のあり方について福岡市の事例をもとに考察を行った。本成果は、『長崎県立大学論集(経営学部・地域創造学部)』第53巻第4号に公表した。本稿では、地方自治体のエネルギー政策における内容と地方自治体の役割の位置づけを整理するとともに、自治体のエネルギー政策における戦略の必要性と都市経営の観点から捉えることの意義について検討した。また、具体例として、福岡県福岡市を取り上げながら、福岡市の基本構想・基本計画と都市計画、環境政策との関係性について整理するとともに、福岡市のエネルギー戦略について検討し、課題を示した。 都市経営の視点に基づくエネルギー政策研究は、研究計画において既に記している自治体経営、地域経営的な視点にもつながる所であり、九州地域における一つの取り組みとして位置づけることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(2019年度)は、当初、長崎県や北九州、東北地方の風力発電及び海洋エネルギーの普及策や再生可能エネルギーの事業運営状況や事業運営推進体制、ガバナンス形成の現状について現地視察及びヒアリング調査を行う予定であったが、講義準備、大学業務によると研究との時間管理上のバランスが崩れ、前者にほとんどの時間を取られ、研究時間や調査時間の確保が難しい状況が続いていた。 また当初計画していた、夏季における遠方(東北地方)への長期調査が、台風などの荒天によりできなかったこと、冬から春先にかけて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、移動を伴う現地調査やヒアリング調査が自粛要請により不可能となったことも調査・研究の遅れにもつながった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2020年度)の研究課題としては、第1に、2019年度の1年間に得た知見や情報を活かしながら、昨年度できなかった長崎県や北九州における風力発電および海洋エネルギーの普及策や再生可能エネルギーの事業運営状況や推進体制、ガバナンス形成の現状について現地視察及びヒアリングも交えた実態調査を行う。また、山形県((株)やまがた新電力)など、他の先進地域の事例にも引き続き着目し、現地調査及びヒアリング調査に基づいて把握する。 第2に、九州圏内にある木質バイオマス及び畜産系バイオマス、地熱発電の導入事例に関して、再生可能エネルギー事業運営状況、推進体制、地域エネルギーガバナンス形成の現状について把握するため、現地視察及びヒアリング調査を行いたい。第1及び第2の研究課題に取り組みながら、再生可能エネルギーの事業運営やガバナンスのあり方に関するカテゴリー化の土台となる調査研究を行う。 第3に、風力発電や海洋エネルギー、バイオマス、地熱発電などの再生可能エネルギーの現状を踏まえながら、再生可能エネルギー別のポテンシャル分析、及び地域経済における影響や効果に関する定量的な分析を行っていく。 第4に、都市における再生可能エネルギー普及や地域エネルギーガバナンスの検討を行うにあたっては、2020年の発送電分離が開始された中で、電力需要側からみた地域における再生可能エネルギー事業普及の可能性を探るとともに、都市スマート化やコジェネレーションの可能性についても視野を広げて研究していきたい。 これらの分析を通じて、都市部、離島、山間部・過疎地域など地域特性を踏まえた再生可能エネルギー事業経営の地域モデル化や地域エネルギーガバナンスのあり方に関する類型化につながるような調査・研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は調査・研究の遂行が大学業務や台風などの自然災害、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う移動制限等の影響が重なり、361,984円の未使用額が発生したことにより、次年度に繰越した。次年度使用計画に関しては、今年度の研究計画にも記載しているが、昨年度実施できなかった調査・研究があるので、繰り越した分も併せて使用する予定である。
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