研究課題/領域番号 |
19K12456
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
倉阪 秀史 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20302523)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 持続可能性 / エコロジカル経済学 / 資本基盤 / 通過資源 |
研究実績の概要 |
本研究は、経済の持続可能性を確保するための新しい理論体系を構築し、持続可能性を確保するための政策体系を導き出そうとするものである。現在のエコロジカル経済学において、経済の適正規模を確保するために「脱成長」”degrowth”を求めるという考え方が主流となっていることに対し、経済の持続可能性を確保するために各資本基盤の健全性を確保するも併せて必要であるという考え方に基づき、「通過資源管理」と「資本基盤管理」の双方を体系化する新しい理論体系を確立しようとするものである。この研究において、「資本基盤」とは、「有用性をもたらすメカニズムを備えた存在で有用性を与えることによってなくならないもの」と定義される。一方、「通過資源」とは「有用性を与える際に物質的に変形して後に残らないもの」と定義される。これらの定義は、エコロジカル経済学におけるファンド-サービス資源とストック-フロー資源の区別に沿ったものである。 経済の持続可能性は、「資本基盤」(人的、人工、自然、社会関係)の持続可能性によると考え、その際に、新しく「資本基盤」を創り出す営みに加えて、すでに存在する「資本基盤」の手入れ(ケア)を行う「ケア(手入れ)労働」の重要性を指摘した。 「ケア(手入れ)労働」は、新しく生産物を創出する「生産労働」に比べて、規模の利益を享受できないなど、労働市場では十分に評価されない可能性がある。このため、「完全ケア」を目指して政策を講ずることが必要となる。 このような研究に基づき、倉阪秀史(2021)『持続可能性の経済理論 SDGs時代と「資本基盤主義」』(東洋経済新報社)を刊行した。2021年の国際エコロジカル経済学会において、Capital bases, care works, and the capability approachと題する口頭発表を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単著『持続可能性の経済理論 SDGsと「資本基盤主義」』(東洋経済新報社)を刊行できたこと、国際エコロジカル経済学会で報告できたことを考えると、研究内容はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
持続可能性の経済理論は、当初から英文展開を考えており、英訳の上、本研究費を用いて、ネイティブチェックを行ったところである。2022年度に繰り越しした研究費をもちいて、海外渡航を行って学会等でのプレゼンテーションを行うとともに、その英文出版をすすめてまいりたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で海外渡航ができなかったため。2022年度に海外渡航を予定している。
|