研究実績の概要 |
本研究は、経済の持続可能性を確保するための新しい理論体系を構築し、持続可能性を確保するための政策体系を導き出そうとするものである。経済の持続可能性を確保するために各資本基盤の健全性を確保することがて必要であるという考え方に基づき、「通過資源管理」と「資本基盤管理」の双方を体系化する新しい理論体系を確立しようとするものである。この研究において、「資本基盤」とは、「有用性をもたらすメカニズムを備えた存在で有用性を与えることによってなくならないもの」と定義される。一方、「通過資源」とは「有用性を与える際に物質的に変形して後に残らないもの」と定義される。経済の持続可能性は、「資本基盤」(人的、人工、自然、社会関係)の持続可能性によると考え、その際に、新しく「資本基盤」を創り出す営みに加えて、すでに存在する「資本基盤」の手入れ(ケア)を行う「ケア(手入れ)労働」の重要性を指摘した。「ケア(手入れ)労働」は、新しく生産物を創出する「生産労働」に比べて、規模の利益を享受できないなど、労働市場では十分に評価されない可能性がある。このため、「完全ケア」を目指して政策を講ずることが必要となる。このような研究に基づき、倉阪秀史(2021)『持続可能性の経済理論 SDGs時代と「資本基盤主義」』(東洋経済新報社)を刊行した。2021年の国際エコロジカ ル経済学会において、Capital bases, care works, and the capability approachと題する口頭発表を実施した。さらに、東洋経済新報社から刊行した内容を英訳し、そのネイティブチェックを行うとともに、英文編集作業を実施した。その成果は、2023年の国際エコロジカル経済学会において発表する予定である(この渡航費などは、本科研費外から支出予定)。
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