研究課題/領域番号 |
19K12459
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤川 清史 名古屋大学, アジア共創教育研究機構, 教授 (60190013)
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研究分担者 |
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国 / 産業連関分析 / 応用一般均衡分析 / 再生可能エネルギー / 炭素排出量取引市場 / 直接投資 / 内包環境汚染物質 / クリーンエネルギー自動車 |
研究実績の概要 |
中国政府は国内規制強化と経済的手法で炭素排出を抑制しようとしている。それと同時にエネルギー集約産業を海外移転させており、「一帯一路」構想もその一環であろう。本研究では中国国内のエネルギー政策および海外戦略が関連国の産業構造と炭素排出に及ぼす影響を分析する。 中国の電力は石炭火力発電が中心であるが、再生可能エネルギーの導入は石炭産業等を中心に雇用等にマイナスの影響がある可能性がある。シナリオ産業連関分析の手法を用いて、中国国内での再生可能エネルギー利用の経済効果を分析した。王嘉陽(自然エネルギー財団)・藤川清史「電源選択による経済環境効果」(邦訳)中国投入産出学会(CIOA)(西安交通大学 2019年8月)および韓国経済システム分析学会(KESRA)(新羅ステイ麻浦2020年2月). 中国では主要地域で炭素排出量取引市場が設けられたが、現在は電力の全国市場が創設された。ただ、電力は生産地と消費地(の省)が異なるために炭素排出の責任分担が議論になる。電力消費基準の省別の初期配分量に関する論文を執筆した。居乂義(東京大学)・藤川清史(2020)「中国の排出量取引市場の現状と課題:初期配分量を中心に」(邦訳), Mimeo.分担者伴ひかりは、中国の対外直接投資とCO2排出の関係をGTAP-Eモデルをベースにした特殊要素モデルを用いて分析した。特殊要素GTAP-Eモデルは投資・貿易の国際連関を通じた経済効果を分析できる。伴ひかり(2020)「中国の石炭・電力部門の対外直接投資の経済・エネルギー・炭素排出へのインパクト」(邦訳),Mimeo. また、栗洋(中南財形政法大学)・王嘉陽・李鎮勉(韓国産業研究院)は水素電池自動車などのクリーンエネルギー自動車(新エネ自動車)導入の日本・中国・韓国の比較を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藤川と伴は、研究協力者(王嘉陽(自然エネルギー財団)、居乂義(東京大学)、Vo Tuyet Le(名古屋大学)、叶作義(上海対外経貿大学)、栗洋(中南財経政法大学)、李鎮勉(韓国産業研究院))と共同して、以下のような学会報告や研究会の開催を行った。 上記の学会報告のほかに、名古屋大学アジア共創教育研究機構と韓国産業研究院は省エネ自動車に関する研究会を名古屋大学にて開催した。栗洋・藤川清史・居乂義・王嘉陽は成都と武漢の若手研究者を招聘しプラスチックの再生利用に関するセミナーを開催した。また、中国の廃車に関する研究を進め論文を発表した。栗洋・藤川清史・居乂義他(2020)「中国での廃車の将来予測」(邦訳)サステナビリティ,12(4)。藤川清史・伴ひかり・叶作義は、中国の対外援助戦略に関する研究会を神戸学院大学で開催した。また他の科研研究会と共同であるが、インドネシアで開催された中国の対外進出に関する研究会で、Vo Tuyet Le と居乂義は中国の貿易の内包環境汚染物質に関する研究を報告した。同研究会で、王嘉陽は中国での再生可能エネルギー導入の経済効果について報告した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、中国国内のエネルギー・気候変動政策と中国企業の国際展開と気候変動に関する出版を計画している。中国国内のエネルギー・気候変動政策は本科研研究に当初課題ではなかったが、エネルギー・気候変動政策について、国内政策と対外政策とは不可分と考えられるので、今後は本研究グループの研究課題に加えたいと考えている。また、エネルギー政策の一環としてクリーンエネルギー車導入の経済的影響も分析の視野に置くことにする。 出版内容の概要は以下のとおりである。第1章:中国の産業構造の変化と炭素排出について(叶作義・藤川清史)、第2章:中国の再生可能エネルギー政策―日本・中国・韓国の比較―(王嘉陽、李鎮勉)、第3章:中国における再生可能エネルギー発電の最適立地(王嘉陽)、第4章:中国の炭素排出量取引市場の現状と課題―電力・セメント・非鉄金属の全国市場の構造―(居乂義)、第5章:中国の炭素排出量取引市場の現状と課題―初期配分量の決定に関して―(居乂義・藤川清史)、第6章:中国のモビリティの脱炭素化―日本・中国・韓国の比較―(栗洋・李鎮勉)、第7章:中国の直接投資と炭素排出量(伴・藤川清史)、第8章:東アジア炭素排出量取引市場と中国(伴ひかり・藤川清史)、第9章:中国の直接投資と炭素排出量(伴ひかり・藤川清史)、第10章:中国と日本の対外援助政策と炭素排出量(叶作義・藤川清史)
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる感染症の影響で、予定していた学会が開催されなかった。
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