気候変動対策や生物多様性保全、森林保全に関する持続可能な開発目標(SDGs)達成のための科学・政策インターフェースに関する課題を明らかにした。 特に気候変動や生物多様性などの様々な社会的課題への対処しながら、人間の幸福と生物多様性の便益を同時にもたらす幅広い対策を指す「自然を基盤とした解決策(NbS)」を中心に、気候変動と生物多様性に関する政策的・科学的プロセスにおける議論の変遷を分析し、気候変動対策と生物多様性保全を両立するための政策と科学の関係性について明らかにした。気候変動と生物多様性の両問題の同時解決に関する議論は、SDGsを軸とした持続可能な開発のための2030アジェンダが採択された2015年以前は、生態系を基盤とした気候変動の緩和策や適応策を軸とした個々の対策やそれらの関連制度の課題が中心であった。2015年以降は、気候変動と生物多様性の両観点に加えて、より幅広い持続可能な開発を実現するための社会システム変革の必要性や、それに関わる様々な要素(国際から地方までの多様な制度や政府、民間企業などの行為主体)の関係性などの幅広いガバナンスの課題とそれに対応する科学と政策との関係性を考える必要性が示された。 加えて、NbSのアプローチの一つである、途上国における森林減少・劣化に由来する温室効果ガス排出削減策等(REDD+)を取り上げ、REDD+ファイナンスに関するこれまでの学術的議論や、それに関わる政策と科学の関係性について文献レビューを基に明らかにした。
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