昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染拡大のために現地台湾での情報収集ができない状況にあったものの、昨年同様史料の読解を通じてその欠を補った。 具体的には『キリスト新聞』、『台湾の政治犯を救う会活動記録』、『アジア通信』といった史料を分析し、当時の政治犯救援のための日台連帯のネットワークの中においてキリスト教やキリスト教関係者がどのような位置を占め、どのような役割を担っていたのか考察を進めた。台湾の政治犯を救う会の活動は当時の国際社会に台湾の現状を伝える上で大きな役割を果たしたのだが、本会については不明な点が多く今後の調査の進展がまたれる。史料をみる限り、多くのキリスト教関係者の参与があったことがわかってきた。そこで本会に関わりがあった人物のうちキリスト教関係者について調査を実施した。 その分析結果は7月に開催されたThe 2021 Annual Meeting East Asian Society for the Scientific Study of Religion、10月に韓国の全南大学5・18研究所、台湾の二二八事件紀念基金会、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院の東アジアメディア研究センターの共催で開催された国際共同学術大会「東アジアの国家暴力、再現と連帯」などで報告し、国内外の研究者と議論を行なった。その成果は今後論文として刊行できるように準備を進めている。 奇しくも2021年9月より東京にて台湾の国家人権博物館による初めての海外での特別展「私たちのくらしと人権」が行われ、台湾の政治犯を救う会についても多くの情報が開示された。本研究とも関わりの深い展示であり、日本社会でも広く知られるべき内容であると判断し、本研究と協力の上で本展示を2月に札幌市内でも開催し、研究成果を広く社会へと公開した。
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