研究課題/領域番号 |
19K12470
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日置 史郎 東北大学, 経済学研究科, 教授 (80312528)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 中国 / グローバルバリューチェーン / イノベーション / イノベーションシステム / 特許 / 携帯電話 / 知識 / 学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国企業が主導するグローバルバリューチェーン(GVC)の実態、とくに①ガバナンスの実態と②主導する中国企業から他のアジア諸国のローカルサプライヤーに生じる知識移転・学習に焦点をあてて明らかにすることである。 ①ガバナンスの実態については、年度末に初歩的な実態調査を行う予定であったが、新型コロナの流行により調査を実施することはできなかった。 ②中国企業からの知識移転という点では、そもそも学習対象となる中国企業がどのような技術能力に長けているか、その特徴はなにかというところから明らかにしておく必要があると考え、近年、イノベーション能力の台頭が著しい中国の通信機器産業を対象として、そのイノベーション能力を向上させるうえでどのような要因が貢献したのかを考察した。そのために、中国の携帯電話製造業のミクロデータを用いて、各企業のイノベーションの多寡(特許申請件数をイノベーション産出を測る変数とした)を説明するモデルを負の二項回帰によって推定した。推定の結果、①特許申請件数は研究開発投資の規模が大きく、垂直統合企業であり、(香港・台湾・マカオ系を含む)広義の外資系企業であるほど、特許申請件数が有意に多くなる傾向があり、②深センへの立地は、企業の特許申請件数とは有意な相関がない(有意ではないが、負の相関がある)、③製品開発プロセスでの困難を解決するプロセスで研究機関との知識リンケージを重視する企業ほど、特許申請件数が有意に多くなる傾向がある、④同じプロセスでバリューチェーン(特にサプライヤ)との知識リンケージを重視する企業は特に特許申請件数が多くなるわけではない、といった発見があった。この結果は、中国企業が新規性の高いイノベーションを産出するうえで、研究機関との知識リンケージに代表されるイノベーションシステムの重要性を示唆し興味深いため、国際学術誌への投稿論文を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主題は、中国企業が主導するグローバルバリューチェーン(GVC)の実態、とくに①ガバナンスの実態と②主導する中国企業から他のアジア諸国のローカルサプライヤーに生じる知識移転・学習に焦点をあてて明らかにすることであるが、新型コロナの流行によって、年度末に実施予定であった現地調査が実行できなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
日本および実地調査予定国(主として東南アジア)での新型コロナ情勢が収束し、現地へ渡航することができるようになるのをまつほかはないが、長期化する見通しも一部にあるため、現地産業調査会社に調査を委託するなどの方策を別途講ずることも考える。他方、国際産業連関表や貿易マトリックスや国際直接投資データを用いた計量分析によって、中国と周辺開発途上国に構築されているグローバルバリューチェーンの構造およびその産業高度化との関係性についての考察を同時進行させるようにし、コロナの影響を最低限にとどめるようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行により、予定していた現地調査を実施することができなかったため。翌年度に現地調査を実施し、使用する。
|