研究課題/領域番号 |
19K12473
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
渡辺 暁 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20635338)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移民 / ユカタン / 先住民 / 移民と政府 / 移民キャラバン |
研究実績の概要 |
本研究はメキシコ・ユカタン州の先住民村落におけるフィールドワークを通して、メキシコの政治経済的変化とアメリカ合衆国の移民政策の変化という二つの大きな変化によって、移民を多く送り出す先住民社会がどのように変容してきたのかを研究するものである。2019年度はこのテーマについて、同志社大学の紀要に論文を発表し、また本研究のテーマに関連する重要な社会現象であり、2018年・19年に発生して注目を集めた、中米からの移民キャラバンについて、日本政治学会にて発表し、その内容をまとめた論考を『ワセダアジアレビュー』誌に執筆した。 また、9月と12月の二度、ユカタン州での現地調査(本科研を用いたものと、早稲田大学山崎真次先生を中心とするグループの科研費を使わせて頂いたもの)を行うことができ、フィールドワークを行って現地(メキシコ側)の最新の状況についての話を聞くことができた。 新型コロナウィルスの影響により、今後、たとえば2020年度にどの程度現地調査を行うことができるかはわからないが、現地の報道そしてソーシャルメディアなどから入ってくる情報をもとに、現地で何が起こっているかをできる限りフォローしていくと同時に、これまでの成果を論考にまとめていく予定である。 また、新型コロナウィルスについては、これだけ世界的な広がりとインパクトを持った社会現象であるため、この新型コロナウィルスのユカタンの現地社会への影響、あるいはアメリカ合衆国にすむ先住民移民の人々のコミュニティへの影響、あるいは彼らのネットワークが新型コロナウィルスに対して取った対策についても、本研究の考察対象に加えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は二度のユカタン州での現地調査(本科研を用いたものと、早稲田大学山崎真次先生の科研費を用いたもの)を行い、メキシコ側については、最新の政治状況・社会状況の調査をすることができた。また論文も二本(同志社大学の紀要論文ならびにワセダアジアレビューの論考)出版できたということで、初年度としてはまずまずのスタートであったと考えている。しかし本来の予定ではもう一度、2月か3月に行くはずだった、アメリカ合衆国の側での調査を、新型コロナウィルスの影響で取りやめたため、その分進められるはずだった研究が遅れてしまったという側面も否めない。これについては2020年度あるいは21年度に、新型コロナウィルスの影響が一段落した時点で調査を行う予定である(ただし、2020年5月現在、アメリカ合衆国およびメキシコでも新型コロナウィルスは猛威を振るっており、実際にいつ頃渡航が可能になるかはわからない)が、それまでは日本にいてできる研究を進めていく所存である。詳しくは次項に譲るが、現時点ではソーシャルメディアやメールを通じて、彼らと連絡を取って話を聞くとともに、ソーシャルメディア上での先住民の人々の発信や彼ら同士のやりとりを見ることで、彼らのネットワークが新型コロナウィルスにどのように対応しているかを考察していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、引き続きメキシコとアメリカ合衆国カリフォルニア州での現地調査を行い、米墨国境の両側における、メキシコ先住民のコミュニティの社会変容についての調査を行っていくつもりである。 ただし今後、特に2020年度は、新型コロナウィルスの影響で、どの程度現地調査を行うことができるかはわからないため、今後は研究計画の大幅な変更を余儀なくされることが予想される。当面は現地の報道や、これまで集めてきたもの、そして今後も収集する文献資料をもとに、メキシコ・アメリカ合衆国の両政府の移民政策の変化をきちんとまとめ、移民と政府の関係について考察し、投稿論文としてまとめることを、目標としようと考えている。また、現在はアメリカ合衆国側の態度の硬化によって、移民という現象自体が縮小に向かっているが、メキシコ系移民が数的にもピークに達し、文化的にも注目されていた2000年代半ばの資料を基に、当時の状況をまとめ直す、といった作業も、現在できることの一つとしてやっておきたい。 移民社会の現状については、ソーシャルメディアなどから入ってくる情報をもとに、現地で何が起こっているかをできる限りフォローしていくつもりである。Facebook上でのやりとりや、Twitterでの発信などを元に、彼らがどのようにネットワークを生かして新型コロナウィルスに向き合っているのかを考察していく予定である。現地に直接行けるかどうか、先行きが不透明な分、現地調査に行けないことを補うような、さまざまな方法をとりいれるような形で研究を進め、適宜その成果を論考にまとめていこうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、2月から3月にかけて予定していた調査に出られなくなったため、その分の旅費が未使用となった。これが、次年度使用額が生じた理由である。2020年度以降、現地調査が可能になった時点であらたな現地調査を計画し、その費用として使用していく計画である。
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