研究課題/領域番号 |
19K12478
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (00315392)
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研究分担者 |
風戸 真理 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 講師 (90452292)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モンゴル / 生業 / 産業 |
研究実績の概要 |
本研究課題の核心をなす学術的「問い」は、「脱生業化により牧畜社会がグローバルな市場経済に組み込まれた現状において、牧畜社会の生業性と産業性はどこで均衡しうるのか?」であり、広域的な流通網との接触において長い歴史を有するモンゴル高原地域において文化人類学的な手法を用いて実証的なデータを収集・分析する。本研究課題における具体的な研究対象は、モンゴル高原地域における脱生業化に伴って商品化が進んでいる生業生産物のうち、食および住の側面である。 本年度は、分担者(風戸)のスケジュール上の都合より、代表者(尾崎)と分担者(風戸)の研究打ち合わせと代表者(尾崎)と協力者(包)の研究打ち合わせを別個に行い、作業分担等を明確にした。 代表者(尾崎)と協力者(包)は、内モンゴル中部およびモンゴル国南部で現地調査を実施し、主としてラクダに特化した乾燥地域の牧畜民を対象に、彼らの乳製品の商品化、畜糞の利用、内モンゴルとモンゴル国との間の牧畜労働者の越境・交流について観察及び聞き取りを行った。 また、代表者(尾崎)は内モンゴルの馬乳酒生産の歴史的変遷に着目し、文献資料および現地調査資料を用いた分析を行い、1930年代から現在までの約90年間のタイムスパンにおいて、生業と産業の均衡点の変動プロセスを分析した。 分担者(風戸)は、モンゴル国中部で現地調査を実施し、旧正月期間における儀礼食・歓待食を中心に、生業性と産業性の側面から現地調査を実施した。 一方、代表者(尾崎)・分担者(風戸)・協力者(包)の3名で2020年3月に内モンゴルで実施予定だった生業生産物の中食化に関する現地調査は、コロナウイルス蔓延の影響で来年度へと延期を余儀なくされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内モンゴル及びモンゴル国におけるラクダに特化した乾燥地域の牧畜民に関する現地調査および、モンゴル国における旧正月期間における現地調査においては、生業性と産業性の均衡に関する基本的な調査データを得ることができた。 畜糞および内モンゴルにおける馬乳酒生産の歴史的変遷については、論文として発表することができた。 それ以外の項目においても、適宜口頭発表を実施できた。 コロナウイルス蔓延の影響で延期を余儀なくされた研究項目が発生したが、本年度は初年度であることに鑑み、来年度以降、感染状況が沈静化してから研究を実施することは十分可能であろうと推測される。 以上の理由により、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の推進方針は、以下の通りである。 4月に内モンゴルで予定していた研究打ち合わせは、オンラインにて実施する。また5月に予定していた中間報告は、開催取り消しが決定したため、11月に延期する。 また現地調査については、モンゴル国は2020年度の夏季(予定通り)、内モンゴルは2020年度の夏季(昨年度分)および冬季(今年度分)に実施する。 一方、モンゴル国を対象とした、文献資料から過去100年程度のタイムスパンにおいて、生業と産業の均衡点がいかに変動したかというプロセスの復元については、予定通り実施していく予定である。 また再来年度の研究については、専ら成果の取りまとめであるため、現状では予定通りの実施を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に内モンゴルで実施予定だった現地調査が、コロナウイルス蔓延の影響で来年度へと延期を余儀なくされたために次年度使用額が生じた。 当該現地調査は2020年度の夏季に実施予定である。なお、本調査は翌年度分として予算請求した現地調査等とは別に実施するものである。
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