研究課題/領域番号 |
19K12478
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (00315392)
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研究分担者 |
風戸 真理 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (90452292)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モンゴル / 生業 / 商品化 / 変動プロセス |
研究実績の概要 |
2020年度の調査計画は、2019年度末に実行できなかった内モンゴルでの現地調査、5月の日本モンゴル学会における分科会発表、2020年に予定していたモンゴル国での現地調査、および文研研究を通じた過去100年程度のタイムスパンにおける、生業と産業の均衡点の変動プロセスの復元であった。しかし、2019年1月以降のCOVID-19ウイルスの蔓延により、現地調査はすべて延期せざるを得ない状況となり、また5月の日本モンゴル学会は中止となった。そのため、本年度の研究の主力を文献研究を通じた、モンゴル国および内モンゴルにおける過去100年程度の生業と産業の均衡点の変動プロセスの復元に絞り、また成果発表も個人が執筆する論文発表もしくはオンラインでの発表が認められている学会での個人発表へと変更した。 まず、研究打ち合わせは内モンゴル在住の研究協力者を含め、すべてオンライン会議アプリケーションを利用した遠隔方式に切り替え、2020年5月、同9月、2021年1月に行った。研究代表者および研究分担者は主として自身の過去の調査データを利用した再分析に依拠し、『文化人類学』誌上で「《特集》文化と身体の交差点としての食」を企画し、2020年12月に合計4本の論文を掲載した特集として掲載された。 また研究代表者は内モンゴルにおける1930~40年代の調査データおよび各種地図データ(帝国陸軍作成の外邦図など)の分析を通じ先行研究の調査地点を特定し、自身の調査データと対照して数地域における変動プロセスの復元を行った。その結果の一端は2021年3月のIUAES2020 Online Congressにおける口頭発表「History of Japanese anthropological Mongolian studies from the beginning of 20th century」に盛り込まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は現地調査による研究と文献の分析による研究の2側面から実施するものであるが、2019年1月以降のCOVID-19ウイルスの蔓延により、モンゴル国および内モンゴルで実施予定であった現地調査はすべて延期せざるを得ない状況となっている。また研究発表の場の確保においても、同様の理由によりシンポジウム形式の実施が困難となっているほか、学会も中止や規模縮小が相次いでおり、予定通りの発表が行えていない。 しかしその一方で、本年度は文献の分析に注力した結果、過去の調査データを利用した再分析に依拠した『文化人類学』誌上における特集の掲載や、過去の地図データを活用した調査地点の特定などの研究においては予想以上の成果が得られている。 これらの事情を総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中にCOVID-19ワクチンの普及などで海外での現地調査が可能になれば、2019年度および2020年度に実施予定であった現地調査を実施し、生業生産物の商品化の現状に関する最新情報を勘案したうえで、最終報告書の執筆にとりかかるとともに、当初の予定通り内モンゴルにおける成果報告会を2021年2月に実施する予定である。また最新の調査成果を英語論文化し、調査協力者を含めた3名で2-3本の論文を英文誌へ投稿し、国際的に発信する。 もしCOVID-19の状況が好転せず、上記計画の実施が困難と判断した場合には、モンゴル国における社会主義集団化時代(1960-80年代)の状況に詳しい国内研究者に協力を依頼し、もっぱら文献データと過去の調査データに依拠して英語論文化を進めるとともに、オンラインで参加可能な国際学会等において外部メンバーも加えて分科会を組み、本課題の成果を国際的に発信する予定である。なお当初計画の実施可否の判断は、2021年夏季に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19ウイルスの蔓延により、2019年度末より引き続き2020年度も現地調査はすべて実施を延期した。また、発表予定であった学会が中止となり、オンラインでの発表となった。さらに研究打ち合わせもオンライン会議システムを使用せざるを得ない状況となった。 以上の理由から、旅費の執行ができず次年度使用額が生じた。 本年度中に現地調査が実行できる状況になり次第、モンゴル国および内モンゴルにおける現地調査旅費として使用する予定である。
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