今年度は、コロナ禍によって断念していた、現地調査を再開し、以下の点を明らかにした。 まず、地元の済州大学の研究蓄積から、済州道に住む住民が歴史的に主従関係や家族関係がつよく、住民自治という意識がそれほど高くなかった点について明らかにした。次に、済州特別自治道庁でのヒアリングでは、住民自治に関する様々な団体がそれぞれ自身の団体の利益や権利を主張する構図があり、そのため、住民自治に関する決定や判断について混乱が生まれている。その際、住民自治委員会が役割を果たすべきであるが、影響力が弱いため、十分に力を発揮できていない。そこで、現在、試験的に「住民自治会」を別途組織し、その組織に住民自治に関するガバナンス機能を持たせることが決定した点を明らかにした。加えて、各洞に設置された住民自治センターを評価する制度があり、その詳細な基準についても明らかにした。 今回、最優秀賞を受賞した「済州市3徒1洞」にヒアリングを調査を行った結果、住民自治委員会の構成メンバーや特徴について明らかとなった。具体的には委員は報酬はなく完全ボランティアであり、名誉職であるため、韓国社会において信頼を得られる効果があり、希望者が多く常に抽選が行われている人気職であることが明らかとなった。また、同委員になるための必須カリキュラムである「住民自治学校」については、もともと委員を希望する住民は、地域社会に対する思いや、同活動に対し理解が深く、募集に対しても主体的に申し込んでいるものがほとんどであるため、内容については不十分であり、より高度なものを求めている点が明らかになった。さらに「住民自治学校」は委員になるためのカリキュラムとして重要であるが、「社団法人韓国確信研究院」が広く一般の地域住民を対象とした「住民自治大学」があり、住民自治制度について考察するうえで、新たに調査分析が必要であることを明らかにした。
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