研究課題/領域番号 |
19K12480
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
堀内 賢志 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80329052)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / 極東地域 / 地域開発 / 経済特区 / 日露協力 |
研究実績の概要 |
本研究の三つの課題のうち、①極東地域開発の進捗状況に関しては、同地域に設置された経済特区(先進経済区、ウラジオストク自由港)を中心とした状況をまとめ、分析した。これらの特区のレジデント数は、想定を超えて増加している。他方、外国資本の誘致が重視されていたが、外資の進出状況は思わしくない。そこには、先端技術を利用した産業や輸出志向の産業の育成という当初の目的とは合致しないものも多い。こうした特区による極東地域の経済・社会発展に対する寄与は、現在のところ小さい。 ②極東地域開発における各政策主体の活動と連携関係についていえば、この開発を左右する地方主体の肯定的な役割だけでなく、その否定的役割も観察された。知事の交代による混乱や業務の滞り、パートナーとなる現地の投資家との利害の齟齬、また地方政府からの要請によって行われた特区の優遇税率の改訂などが、とりわけ特区に進出した外資系企業の活動に否定的な影響を与えている。こうした地方主体による否定的な影響は、ある面では、①で明らかにしたように、極東地域開発が現地の経済・社会状況を改善できていないことに起因している。逆に、こうした地方主体との協力関係を構築することによって、スムーズな業務実施を実現できている例もある。 ③日本をはじめとするアジア太平洋諸国との協力に関わる事業の進展については、②で明らかにしたような地方主体による否定的な影響に加え、輸送インフラ・国境インフラ等の未発展や行政的な煩雑さといった問題が依然として存在し、順調とはいえない。とはいえ、現地におけるニーズの把握、地方主体との協力関係の構築、現地における諸問題への適切な対応等によって、事業を成功させている例もある。また、拡大図們江イニシアチブ」(GTI)のような国際インフラ発展のための協力も進展しており、こうしたものが極東地域をめぐる国際協力の発展に寄与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月にウラジオストクおよびハバロフスクで現地調査を行うことを想定していたが、コロナウイルスの感染拡大のため断念した。このため、これらの地域における最新情報を現地で得ることはできなかった。とはいえ、2019年9月のサハリン出張や、インターネット上の資料、文献を広く渉猟したことによって、全体として研究を進展させることはできていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの感染拡大により、2020年度は現地調査の機会が制限される可能性がある。また、この地域開発の進捗や、政策自体も、大きく変化する可能性もあり、その場合、現状の把握や分析がより困難となると考えられる。これまで以上にインターネット上で得られる情報を幅広く収集し、またその他のルートを使った情報収集を強化しながら、現地調査の可能性・方法を探っていきたい。同時に、研究の分析枠組みについても考察とその発展に向けた努力を継続し、急激な短期的変化を考察の中に収めることができるような視野をもった分析をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の出張をキャンセルせざるを得なかったため、急遽、この現地調査を補うための書籍等物品の購入など、全体の経費利用計画を変更することになり、若干の経費の余りが生じた。この繰り越し分は、大きな額ではないため、2020年度の経費使用計画を変更させるものではない。2020年度は、ウラジオストク、ハバロフスク出張に加え、モスクワもしくはその他の都市への出張による現地調査を中心に、経費を使用する予定である。ただし、コロナウイルスの感染拡大により、現地調査が大きく制限される可能性がある。このため、その状況を適宜把握しながら、現地出張の可否を判断し、計画を大きく変更する必要性が生じることも念頭に置き、適切な研究遂行ができるよう判断していきたい。
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