研究課題/領域番号 |
19K12480
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
堀内 賢志 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80329052)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / 極東地域 / 地域開発 / 東方シフト / 日露協力 / 経済特区 / 大ユーラシア |
研究実績の概要 |
2022年度は、ロシアによるウクライナ侵攻後の新たな状況変化と、それが本研究の中心となる「東方シフト」政策に与える影響、その中での極東地域政策の進捗状況の把握に努めた。 本研究の中心的な対象であるロシアの「東方シフト」政策については、その方向性自体は侵攻前から変わっておらず、むしろその重要性がより強調されるようになった。ここ数年、この政策の力点は、「大ユーラシア」に力点が移り、ユーラシアを中心とする非欧米諸国との連携がより重視されていたが、侵攻開始後、欧米を中心とする諸国との関係が極めて悪化したことで、中国やインド、中東・中央アジア諸国をはじめとするアジア、ユーラシア諸国との関係強化は、ロシアにとってこれまで以上に重要となった。ただし、こうした諸国も、基本的には自国の利益に従って中立的な立場を取っているにすぎない。この地域におけるロシアの求心力は低下しており、長期的には技術力・経済力の低下と中国への依存が深まることは避けられないと考えられる。欧米の制裁に足並みをそろえる日本との関係は極めて悪化したが、サハリンプロジェクトのようなエネルギー協力のみならず、多くの民間レベルの経済関係は少なからず維持されている。 極東地域開発の取り組みも、侵攻開始後、むしろ強化されており、とりわけ極東地域の重点都市の社会インフラ整備や若い専門的な人材の確保・育成のための諸施策などが推し進められた。極東開発をめぐる国際協力の面でも、侵攻前から見られた中国、インド、ベトナムをはじめとする国々の存在感の高まりがより顕著となっている。とはいえ、政治的な思惑がこの開発政策に影響を与えることでむしろ地域の自立的な発展が妨げられるという傾向が以前から見られたが、こうした傾向もウクライナ侵攻後に強まっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年以降コロナウイルスの感染拡大のためロシアに渡航できない状態であったが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴って外務省のロシア渡航自粛要請が出され、引き続きロシアでの現地調査ができない状態にある。また、侵攻開始に伴い、ロシアの中央・地方の政府機関のウェブサイトに日本からアクセスが困難な状況にもなり、また公式貿易統計も発表がなされないなど、研究に必要な情報の入手が困難な状況が続いていた。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアでの現地調査が困難な状況は当面続く可能性が高い。ロシアの中央・地方の政府機関のウェブサイトへのアクセスは可能な状況になっており、統計も発表され始めている。こうした資料や書籍の収集、現地研究者との協力などを通じた情報収集を強化していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020~2021年度はコロナウイルスの感染拡大のため、2022年度にはウクライナ侵攻後の日本政府によるロシア渡航自粛要請のため、予定していたロシアでの現地調査ができない状況となっており、出張経費として計上していた予算が消化できていない。2023年度は、渡航解除の可能性も見ながら、ロシア以外の国への渡航や現地研究者との協力、より広範な文献・書籍の収集などを通じて使用を考えていきたい。
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