研究課題/領域番号 |
19K12481
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
尾立 要子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (30401433)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 独立問題 / レファレンダム / フランス / ニューカレドニア |
研究実績の概要 |
本研究が明らかにしようとするのは、1988 年のマティニョン協定以降のニューカレドニアにおける先住民と移住者の対立状態からの関係回復、政治的社会的安定の実現の過程の詳細である。 そのために、広範な聞き取り調査を予定していた。残念なことに、2020年度は、コロナウィルスの蔓延に収束が見えない中、フランスおよびニューカレドニアでの現地調査は全く実施できなかった。 ニューカレドニアの脱植民地化において、2018年11月、2020年10月と、独立をめぐるレファレンダムが2回実施されている。ヌメア協定では、紛争から脱する30年の過程の最後に、レファレンダムが実施されている。 研究では、コミュニティが分断状態で存在した80年代の状態に対して、長い時間をかけて多様な社会の営みが張り巡らされた歴史を、暴力的な対立から紛争へと至った過程とともに確認し、併せて、投票の役割に関心を寄せている。レファレンダムでは、2020年10月4日の投票では、独立反対派が53.26%、独立賛成派が46.74%、2年前の投票においてそれぞれ56.4%、43.6%だったのと比べると、差が縮まっている。研究の中間報告である国際政治学会研究大会(2020年10月25日)では、投票が、一見すると、交渉を挟みながら様々な経緯から作り上げられた複雑さに対して、改めて、独立か否かという単純な問いによって、人々が分断されるきっかけになっている点を指摘した。 現地での聞き取り・公文書調査が実施できない中で、文献調査とコロナ禍による出国命令が出されるまでに実施できた聞き取りをもとに構成した中間報告が行えたことは、一定の成果と捉えられる。対立の解決手段としての投票の役割に注目したことは、紛争から脱するための調整過程を検討する上で、新たな視点を提出できた点で重要だったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、3-4回現地調査を予定したかったが、世界的なコロナの蔓延による人の移動を制限する体制のもと、インタビュー調査の実施にこぎつけなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、コロナ状況を見据えながら、可能であれば、フランス、ニューカレドニアにおける現地調査を計画する予定である。 ただし、2021年4月の現状としては、なお、新型コロナウィルスをめぐる各国の方針によって資料調査も聞き取り調査も海外での現地調査が組みにくくなっている。 計画では、研究は関係者への聞き取りを軸に進めることを予定しているが、2021年度にも新型コロナウィルスをめぐる制約が継続している。ニューカレドニアでは、危険地域からの入国者に対して2週間の待機期間を課していることから、具体的な調査を年度内に実施できるかどうか、楽観視はできない。 この点で、事業期間を一年度延長することを検討したい。 その一方で、研究は、地域研究に置いてきた軸足を「暴力から共存へ」との視点側にずらし、各地の識者への聞き取りを試み、多文化社会における共存をめぐる議論を構成する方向へと向かうことも視界に入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのために海外調査ができなかったため、その旅費を次年度の経費にまわすことにした。
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