研究課題/領域番号 |
19K12481
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
尾立 要子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (30401433)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 独立問題 / レファレンダム / フランス / ニューカレドニア |
研究実績の概要 |
本研究が明らかにしようとするのは、1988 年のマティニョン協定以降のニューカレドニアにおける先住民と移住者の対立状態からの関係回復、政治的社会的安定の実現の過程の詳細である。そのために、広範な聞き取り調査を予定していた。2020年度同様に、2021年度も聞き取り調査ができなかった。 ニューカレドニアの脱植民地化において、2018年の第1回、2020年の第2回に続いて、独立をめぐる第3回目の住民投票が12月12日に実施された。第1回目は独立反対派の得票率が56.4%、賛成派は43.6%、第2回目は、反対53.26%、賛成 46.74%で、差は9965票と僅差であった。第3回目は、先住民であるカナク人が多くを占める独立派諸政党が、コロナ禍によって死者が急増していたことを理由に諮問の先送りを要求して投票を棄権した。その結果は低い投票率と、独立反対票の圧倒的な割合として現われた。 2020年の国際政治学会研究大会では、第2回目までの投票結果を前提に報告を行い、交渉と様々な経緯から作り上げられた複雑さに対して、独立か否かという単純な問いによる投票は社会を分断する点を指摘したが、第3回の投票結果からも、答えを出すことは簡単ではないことがわかる。プシェヴォスキの次の問いかけは、ニューカレドニア問題にも当てはまる:「ある決定が全員にとっていちばん良いと、有権者の過半数が考えるだけで十分なのだろうか。それとも、私たちの共通の善は、多数派が考えることとは無関係に特定できるのだろうか。多数派の選択が公益を特定しないとすると、誰が、または何が公益を特定するのだろうか。」(『それでも選挙に行く理由』) 2021年度の研究では、誰がどのように統治するかを選択する方法として多彩な投票の仕組み、対立の解決手段として複数回実施される投票の役割について考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度同様に、2021年度も、3-4回現地調査を予定したかったが、世界的なコロナの蔓延による人の移動を制限する体制のもと、インタビュー調査の実施にこぎつけなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ状況に関して、ワクチン摂取を前提として、国外での学術活動が認められてきていることは喜ばしい。事業期間は一年度延長したが、実際に海外に渡航し調査ができる時間は限られている。今後の研究としては、フランス、ニューカレドニア、オーストラリアにおける現地調査を計画する準備を続けている。その一方で、研究は、地域研究に置いてきた軸足を「暴力から共存へ」との視点側にずらし、ニューカレドニア脱植民地化過程に関わった識者への聞き取りへと調査対象を絞り込み、議論を構成しまとめる方向へと向かうことも視界に入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのために海外調査ができなかったため、その旅費を次年度の経費にまわすことにした。
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