研究課題/領域番号 |
19K12482
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40294607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 台湾農業 / 対中農業投資 / 農業合作試験区 / 台湾農民創業園 / 両岸農業協力 |
研究実績の概要 |
①先行研究の整理に着手した。資料収集の面では台湾の主要雑誌と福建日報を中心に情報を整理した。但し、先行研究の一部と福建日報にはプロパガンダが含まれているとみられるため、分析はやや時間をかけて慎重に行っている。 ②台湾の農業状況については、台湾島全体を俯瞰し、地域ごとの生産状況を確認することはできたが、農村部の郷公所ウェブサイトは詳細な経済情報を提供していない場合が少なくないと判明した。 ③6月に日本現代中国学会西日本部会研究集会で発表した。台湾の対中農産物輸出の前段階として対中農業投資を取り上げ、台湾からの農業技術移転、中台当局間の交渉・台湾農業関係者の需要・投資先の農業発展の要望に支えられた両岸農業協力の経緯を概説した。両岸農業協力は、中国の台湾政策の文脈だけではなく、台湾の農民・農業企業・関係者からの働きかけも考慮する必要があると指摘し、今後の調査の方向性を部分的に示した。 ④9月に台湾の中央研究院台湾史研究所で「1990年代後半以降の両岸農業交流をめぐる利害関係の交錯」をテーマに中国語で発表した。ここでは、両岸農産物貿易や対中農業投資について、台湾側の窓口組織の存在(一部)、中国共産党の政策決定との関連性および宣伝工作の影響、台湾側の対中姿勢の矛盾を指摘した。 ⑤6月と9月に台湾で現地調査を実施した。調査結果を踏まえて、屏東県の檸檬輸出を分析対象に加えることとし、資料収集を開始した。台東県の調査では、行政院農業委員会台東改良場や関係者に聞き取り調査を行った。聞き取りの範囲を拡大するための追加の現地調査を2~3月に実施予定であったが、COVID-19の感染拡大により延期となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた論文での成果公表は2020年度に持ち越されてしまったが、個人情報の取り扱いなど成果公表時に配慮すべき点については必要な手続きを済ませたことや、全般的な研究への取り組みは進展していることから、「やや遅れている」と評価した。詳細は以下の通り。 ①9月の現地調査で扱った台東県の事例について、年度後半に追加の聞き取り調査を実施してまとめる予定であったが、COVID-19の感染拡大で渡航の目途がたっていない。この事例の扱いについては、今後の調査可能性を探りながら判断しなくてはならない。 ②2019年12月に「北九州市立大学における人を対象とする研究に関するガイドライン」に基づいて学内の研究倫理審査委員会に申請し、2020年1月に認可を受けた。これによって聞き取り調査の結果を適切に管理して成果発表に用いることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
本報告書の執筆段階(2020年6月)で、現地調査再開の目途は立っておらず、国内での文献調査も(北九州市のCOVID-19の感染再拡大により)移動自粛の制限を受ける可能性がある。当面は取り寄せ可能な文献資料と中華民国政府がオンライン上で公開する情報を基に分析を進め、これらに基づいた成果公表を計画する。年度内の渡航可能性が閉ざされた場合は、すべての現地調査を来年度に回す。但し、国内外の移動が可能になれば、調査方法を拡充する。 上記を踏まえて今年度は、①2019年度に発表した成果の部分的修正と議論の補充、②先行研究整理・資料収集・経済データ更新の継続、③屏東県の檸檬の対中輸出に関するウェブ上での資料収集、④中国側の文献に基づく両岸農業協力の分析、⑤これらの成果の一部公表、を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大の影響により、2019年度後半に予定していた海外出張を延期したため。
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