研究実績の概要 |
本研究課題では、権威主義体制の「民主的」制度が権威主義体制の持続に貢献してきたことに注目する先行研究の知見を踏まえ、中国の「民主的」制度の起源と制度発展の経緯を明らかにし、その政治的機能の変化を分析してきた。その際、本研究課題は、先行研究がこれまで十分に注目してこなかった「民主的」制度における軍(中国人民解放軍)の活動に注目することに努めた。 2020年度と2021年度、2022年度は新型コロナ感染症蔓延の影響によって、また2022年度は、これに加えて中国国内の政治情勢の影響によって、現地(中国)での調査(中国の「民主的」制度における軍の活動)が不可能だった。そのため、先行研究の調査およびWeb上に分散的に存在するデータの整理をつうじてデータセットの構築作業をすすめてきた。 この結果、2021年度は、これらの活動の成果に関連した研究成果を出版した。中国の「民主的」制度の機能改革において重大な転換点となった胡錦濤指導部後期(2007-2012年)の中国政治の全体像を理解する取り組みの成果として、『十年後の中国』(加茂具樹、2021)を出版した。また、比較的データを集めやすい人民代表大会代表と企業家との関係を理解する取り組みの成果として、『Political Economy of Reform in China』(Kajitani ・ Kamo、2022)を出版した。2022年度の活動は、中国の民主的制度研究に関する先行研究の成果を総括する文脈から、中国共産党大会という共産党の「民主的」制度に関する重要な先行研究であるWu Guoguang, China’s Party Congress Power, Legitimacy and Institutional Manipulation, Cambridge University Press, 2015 と 呉国光『権力的劇場 中共党代会的制度運作』(香港中文大学、2018年)の日本語訳を監訳し、中国の「民主的」制度の政治的機能に関する歴史的な制度発展の経緯の究明に努めた。
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