研究課題/領域番号 |
19K12494
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
岩崎 葉子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 企業・産業研究グループ, 研究グループ長 (40450481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イラン / 企業 / 経営戦略 / 資産保全 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
2019年度はテヘランのアパレル中規模企業のアンケート調査を行なった。日程は以下のとおりであった。 ①5月に業務委託先との契約②8~9月に質問票の素案検討・質問事項の最終確定(過去の調査での協力企業複数社、および同業者組合の関係者との協議)を行なった。9~10月に現地へ赴いた際に業務委託先との打ち合わせ・協議を行い、業務委託費(半額)を前渡しした。③9月末までに質問票のペルシア語訳の校正④10月初旬までに対象企業のリストアップ作業を終えた。⑤アンケート調査の配布・回収は10月12日より開始した。アンケートの回収にあたっては事前に企業担当者にアポをとり調査員が出向いて質問の趣旨説明を加えながら回答を得る訪問方式を採用した。⑥12月16日にファイナル・チェックを終えた。 当初の予定と異なる部分は以下の2点である。 (1)計画では2019年度にパイロット調査、次年度にアンケート調査を実施する予定であったが、パイロット調査の規模と時間を大幅に縮小し、計画全体を前倒しにした。イランをめぐる国際情勢が緊張の度合いを高めており、米大統領選の年(2020年)に調査の主要部分を実施することが難しくなる可能性が高かったためである。(2)当初の計画では就労者数10人以上のアパレル企業を対象とする予定であったが、より限定的な就労者数10~49人の「中規模」企業に対象を絞った。10人未満の企業では経営自体が極めて流動的であるため中長期的経営戦略を問う設問自体が意味をなさないことが多いと考えられること、また50人以上の企業は元国営企業などが多く民間企業の経営とは異なる論理が働いている可能性が高いと推測されるためである。 アンケートの質問項目の概要は、企業の人員構成、起業時の資本調達、他社との提携、人事採用方針、事業継承などに関する43項目である。アンケートを配布した142社のうち60社から回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前述のとおり、現地の恒常的な政情不安に鑑み調査計画は大幅に前倒しして行っている。 (1)アメリカ大統領選に伴って生じる恐れのある政情不安を避けるため、2019年度からアンケート調査を開始した。 (2)アンケート配布・回収作業は10月から半年間を見込んで開始したが、イランの新年(3月)前の数ヶ月は年度末の忙しさから回収作業が滞る恐れがあるとの業務委託先の判断もあり、2019年の年末までにおおよその作業を終えることに成功した。年明けにもわずかな残りの回収作業を継続する予定だったが、年初にアメリカのトランプ政権によるイラン革命防衛隊司令官殺害事件が起こり、それに続くウクライナ旅客機撃墜事件によって米イ関係が極度の緊張状態に陥った上、引き続いてイランで新型コロナウィルスの感染が急速に拡大したため、結果としてそれ以上の調査が不可能になった。偶然とはいえ、なるべく早い段階でできるうちにアンケート調査を実施すべきという業務委託先の判断はまさしく慧眼であった。 (3)2020年度に入り、すでにアンケート結果の集計・データ整理作業を開始した。年度前半には作業を終え、なんらかの中間成果にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、アンケート調査の実施中・及びその後に補足調査として現地のアパレル企業を対象に半構造化インタビューを行う予定であった。イラン及び本邦における新型コロナウィルスの感染拡大の現状と、関連する世界情勢に鑑みるに、最悪の場合今年度内の渡航・イラン現地調査は難しい可能性がある。 そこで当面(1)アンケート調査の結果をもとにした半構造化インタビューでの調査事項の洗い出し作業(2)ウェブ上ないし電話でのインタビューを実施できる企業・業界関係者のリスト作りを進める。首尾よくインタビューが実施できるようであれば年度の後半に集中的に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り2020年1月以降も調査を続行する予定でいたものが、現地の政情不安と新型コロナウィルス感染拡大の影響でそれが不可能になった。残額については2020年度に繰越すこととするが、秋頃まで状況をみて年度を通じて渡航・現地調査が実施できないと判断される場合には、過去の関連業績の英訳に伴う英文監修、収集したペルシア語音声データの文字化およびデジタル化などに予算を振り向ける。
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