研究課題/領域番号 |
19K12494
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
岩崎 葉子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究グループ長 (40450481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イラン / 企業 / 経営戦略 / 資産保全 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
本科研費プロジェクトに関連する今年度の主要なプロダクツは2点ある。 (1)1点目はイラン人研究者との共著による「イラン企業の実像:非発展型『ファミリービジネス』へのアプローチ」という論考で、2021年7月にウェブマガジン上に発表した。中小企業の圧倒的多数を占める家族経営体が、イランの場合諸外国のそれと比較してどのように異なっているのか、またそれはどのような事情を背景としているのかを分析したものである。著者それぞれ現地での長期にわたる観察や聞き取り調査をもとにデータを集めてきたため、イランにおけるファミリービジネスの具体事例とその経営上の傾向についてディスクリプティブにまとめ、今後の研究のための質的なデータを論考の形で残した。 (2)2点目は、2019年に行った中規模アパレル企業対象のアンケート調査のデータをまとめた「イランにおける中小企業の単独主義的傾向と市場の構造」という論文である。これは現在ジャーナルに投稿中である。アンケート調査の後、コロナ禍のため現地に赴いての追加調査ができなかったので、次善の策として過去のデータの再利用や新たな文献資料の発掘に努めた。論文中では世界の中小企業経営に関する先行研究とそこでの論点を概観したのち、アンケート調査に現れたイラン中小企業経営の特色を指摘し、その市場構造との関連を分析した。 (3)上記2点のプロダクツに加え、新規にイラン最古の近代的事業者団体である商工会議所の設立と活動に焦点を当てたデータ収集を開始した。これは個別の企業の経営戦略を全体の中に捉え直し、イランの特異な企業関係を形づくらせる市場構造全体との関連で論じることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のとおり、現地調査ができなかったため本プロジェクトの主眼であった聞き取り調査データが全く集められなかった。文献調査はある程度進めているものの、イランの場合各機関のデジタルアーカイブスはあまり充実しておらず、刊行本も現地に行かなければ検索や入手が非常に難しい。したがって当初予定していた調査、およびそれに基づく業績が出せるかどうかは非常に疑わしい状況である。 ただし、困難な状況下でも上記のプロダクツに結びつけることができたのは喜ばしく、本プロジェクトの成果として一定程度の評価ができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
手元にある文献資料の利用に加え、第一義的には可能な限り現地調査の可能性を追求し、追加的な聞き取り調査(半構造化インタビュー)を実施する。ただしこれはコロナ感染拡大の状況次第である。したがって次善の策として、オンラインでの聞き取り調査のためのリスト作りに着手し、協力者の発掘と調査のアレンジメントに努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り2021年度は渡航が禁止されていたため現地調査が実施できなかった。残額については 2022年度に繰り越すが、秋頃まで状況を見て再び渡航が難しいと判断された場合は、過去の関連業績の英訳に伴う英文監修費用に振り向ける。
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