研究課題/領域番号 |
19K12495
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
白石 壮一郎 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (80512243)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高学歴非エリート層 / 社会移動 / アスピレーション維持 / プレカリティ / 都市友人・親族ネットワーク / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
4月-7月は、東アフリカのケニア・ウガンダ両国における高学歴化と若年層の農村-都市移動の歴史動向、および現代アフリカの中等・高等教育に関する社会人類学の民族誌的報告を探索した。アフリカ諸国の公教育に関する研究は、植民地期以来の教育史、ナショナルな文化や意識の形成、地域(伝統)社会と学校、教育カリキュラムなど多岐にわたるものの、社会人類学的研究の大部分は初等・中等教育を対象としており、若年層を対象にした民族誌に高等教育が部分的に登場したことはあるものの、主題として据えられているものは数少ない。 8月-11月は、第一3半期の連続上で、大学大衆化後の東アフリカにおける大学進学者・大卒者をとりまく状況についての関連研究をサーベイした。産業が未成熟であり、近年の首都圏の外資系企業受け入れを加味しても、パブリックセクターや企業総合職・専門職など学部卒の就職市場はいまだ小さく、未就業・失業状態にある都市部滞留層が一定以上存在する。この背景として、大学伝統校の学生のエリート意識と大衆化後の就職難現状とのギャップ「象牙の塔症候群(Ivory Tower Syndrome)」が指摘される。 以上の文献研究を踏まえ、12月-3月は、(a)昨年度にひきつづき、これまでのフィールド調査で得られたデータ整理・分析をおこなった。また、(b)都市部で滞留する高卒・大卒女性たちの民族誌的報告執筆、およびポスト植民地期初期の高学歴化先行世代の自伝的回顧録の註解執筆との作業をすすめた。双方とも、2022年度中に脱稿・公刊予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、8-9月にはケニア・ウガンダでの現地調査を予定していたのだが、COVID-19パンデミックにより不可能となり渡航を中止した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、国内の大学共同研究利用機関等も利用しながらひきつづき文献調査に比重を置き、執筆中の論文・報告書などを脱稿、研究成果として公刊していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度8月-9月に予定していたウガンダ・ケニア両国での現地フィールドワークは、COVID-19パンデミック状況により中止せざるを得なかった。そのため外国旅費の支出はなく、予定していた10名前後の対象女性へのオープン・エンドな聞き取り調査をおこなえなかった。オンライン通話アプリケーションを利用した聞き取りも試みたが、現地での直接のインタビュー調査に比べれば得られる情報量は圧倒的に少なく、現地のネットワーク通信環境や対象者の使用端末の質・性能とも相俟って、得るべき情報がじゅうぶんに得られたとはとうてい言い難い。以上の事由によって、研究期間を延長した。 2022年度も、パンデミックがおさまり海外渡航と現地フィールド調査が可能となるとは楽観できない。したがって、方針を修正し、国内での文献調査を重視し、2021年度と同じくオンライン通話アプリケーションを利用した聞き取り調査も補助的におこなう。計画したフィールド調査の半ばていどではあるが、まとめられる成果をまとめ、公刊していく。
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