研究実績の概要 |
コロナ禍により海外との往来ができなくなったことにより1年延長したが、それにより延びた最終年度だった。前半には、2021年5月の日本哲学会第80回大会におけるInternational Sessionの成果を英文の電子書籍として発表した。Hirotaka Nakano (ed., coauthor), Mario Mejia Huaman, Adalberto de Hoyos Bermea, Yosuke Bando, Kasumi Ichinose (coouthor), Pre-Modern Thoughts and Philosophy. From Mexican, Peruvian, and Japanese Perspective, Ochanomizu University, 2022。これにより、本研究の中の重要な課題である、非西洋地域の前近代文明における知的遺産が、各地における現代の哲学研究にとってどのような意義をもちうるかという問題を特定し、いくつかの考え方を示すことができた。それと並行して9月には、上記電子書籍の共著者の一人であるMario Mejia Huaman教授の招聘を受けてペルーを訪問し、Universidad Ricardo Palma, Universidad de Lima, Universidad San Antonio Abad del Cuscoにて、前近代の知的遺産と哲学の関係、現代における非西洋地域の哲学のあり方についての講演を行い、現地の哲学研究者、哲学を志す学生と問題意識を共有した。特にクスコにおける講演が起点となって、ケチュア語話者の間に存続する「アマウタ」という賢者の伝統の哲学との関連が今後の研究課題として浮上してきた。この点は今後、別の研究課題へと引き継いでいきたい。
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