研究課題/領域番号 |
19K12499
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
橋本 純一 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (60189488)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アイデンティティ / 消費 / スタジアム / ポスト・モダン |
研究実績の概要 |
地域創生や都市再生の観点から、主に大都市に隣接する中小都市のスタジアムとアリーナを対象に、それらのデザイン(エクステリアとインテリアのコンセプト)と周辺開発の状況がいかなる社会文化的・環境的背景をもって建設されたのか、あるいは構想されているのかを、ローカル・アイデンティティ(シビック・プライド)、帰属意識、消費行動、文明化の過程、サスティナビリティといった側面から、国内外の事例を調査しつつ分析した。 今回の調査では、各種デザインが都市やスタジアム固有の歴史/伝統/物語に基づくアイデンティティに訴求し、アイコンとして利用する事例が多く見受けられた。 また、観戦場所/観戦席の(チケット)消費、身に着けているレプリカユニフォーム/グッズ、味わうグルメ等の消費は、カテゴリー別顧客の欲望を充足させると同時に、周囲の人に自らの立ち位置をそれとなく顕示することにも繋がっており、ホームタウンの都市住民は、彷徨える忠誠心(ロイヤリティ)の置き場をこのようにバラエティに富んだ消費活動の中に求め、しいてはアイデンティティやプライドの醸成や再認識に繋げていると考察された。 さらに、近現代という歴史的観点から、モダン社会においてスタジアム/アリーナは、主に選手のプレーから派生する楽しみを提供することにより男性労働者のフラストレーションを放出するという「サーカス」的単一機能を担うもので留まっていた一方で、ポスト・モダン社会のそれは、客層が老若男女あらゆるカテゴリーに拡大し、ファミリーを中核にしながらの、あるいは監視というフィルターを浸透させながらの消費を通じて、多種多様な(バスティージュ化した)機能を備え、五感が刺激され共振する快楽を希求する広い意味での「パンとサーカス」の場所と化し、それはある意味「文明化の過程」において生起していると考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
諸事情により当初予定していた国内のいくつかの調査地(熊本、広島等)に出向くことができず、データを収集できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ関連で、様々な障害が発生しているため、当初の計画を大幅に変更せざるを得ない状況である。 予測不能であるが、調査可能になった段階で、国内の候補地を中心にすべく調査自体を組み替える。
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