研究課題/領域番号 |
19K12500
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大野 旭 (楊海英) 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40278651)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ウイグル民族問題 / 新疆ウイグル自治区 / 中央アジア / ウズベキスタン / カザフスタン / 中国の民族問題 / 民族自治 / 民族自決 |
研究実績の概要 |
本年度においては、まず春に中華民国台湾に渡って、国立政治大学と国史館をはじめとする各研究機関が所蔵する中国西北諸民族(ウイグルを中心に)資料について閲覧し、複写した。特に中華民国期新疆省に関する歴史資料を中心に収集し、台湾の中国西北イスラーム研究者たちと情報交換をおこなった。 その後、夏にはウズベキスタンに入り、現地調査を実施した。同国西南のサマルカンド市とカシュカダリア河流域に住むウイグル人とウズベク人、首都タシケントのウイグル人社会においてインタビューを進め、情報を集めた。こちらのウイグル人たちは清朝時代の末期から新疆の政治的動乱を避けて亡命してきた人々から始まり、社会主義時代の中国の公有化政策に伴う混乱期に逃亡してきた集団なども複数存在しているのを確認した。現地で発行されているウイグル語新聞や雑誌、それに図書類も集めた。 2020年春、今度はもう一つの新疆と隣接する国、カザフスタン共和国に赴いて現地調査をおこなった。同国の西部と東部、それにアルマティという大都市に分布する亡命ウイグル人デイァスポラから情報を集めた。また、文字資料類も蒐集した。 以上のような現地調査から得た情報に基づいて、『ニューズウィーク日本版』やその他の『産経新聞』、『静岡新聞』などにおいて積極的に発信し、公開講演などを通して市民社会への還元にも勤めた。また、国際シンポジウムにおいても成果について報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、中華民国台湾の研究所や大学においては文献収集を順調に進めることができた。台湾は情報公開の面でたいへん進んでいるからである。現地の研究者たちからもアドバイスを受けることができた。 また、欧米から刊行された最新の研究成果の収集も順調である。特に近年では関心が高まっているソ連時代の民族政策に関する研究成果が多く、今後はそれらに対する分析も必要である。ソ連の民族政策は中国にも大きな影響を与え続けたからである。 夏季と春の中央アジアでの現地調査も両国の研究機関や大学の研究者らの積極的な協力が得られたので、スムーズに展開できた。現地のウイグル人社会が保管してきた文字資料を閲覧することもできたので、今後は更に分析を加えていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画二年度においては、引き続き新疆ウイグル自治区と隣接する中央アジア諸国で現地調査を進める予定である。口伝資料即ち証言と文献史料、それに現地研究者の研究成果など、全般的に史料収集を進める。ただ、中国政府の弾圧強化に伴い、新疆からの亡命者が増加傾向にあるが、中央アジア諸国もまたそれと連動する政情不安定に陥る危険性がある。また、コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大により各国への出入国の困難も予想される。そうした困難が生じた場合には、今日までに既に集めた資料を駆使して文献研究を推進したり、遠隔通信で情報を集めたりする予定である。
|