研究課題/領域番号 |
19K12501
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市野 進一郎 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 研究員 (30402754)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タマリンド / 導入植物 / 起源地 / マダガスカル / アフリカ / キツネザル / DNA |
研究実績の概要 |
本研究では、熱帯地域に広く生育する有用果樹であるタマリンドの起源地とそのマダガスカルへの移入経路を解明することを目的として、DNA多型解析とマダガスカルにおけるタマリンド森林の形成・維持に関する聞き取り調査をおこなっている。研究1年目にあたる今年度は、アンタナナリヴ大学との国際共同研究の準備をすすめた。マダガスカル国内でタマリンド試料を採取するための調査許可、採取した試料を首都アンタナナリヴまで移動させる移動許可、採取した試料を国外に持ち出す輸出許可など、研究に必要な許可手続きについて確認し、その準備をすすめた。また生物多様性条約を遵守した手続きのため、主調査地であるベレンティ保護区の所有者から事前情報に基づく同意(PIC)を取得し、遺伝資源の利用に関する合意(MAT)の作成に必要な研究計画をアンタナナリヴ大学に提出した。3月の渡航を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期せざるをえなかった。 上記の現地調査準備とは別に、マダガスカルにおけるタマリンド森林の形成・維持機構を明らかにするために、タマリンドに関する地域住民の認識と利用実態について、これまでの調査で採取した情報を取りまとめた。(1)マダガスカル南部の川辺林はタマリンドが優占する森林で、地域コミュニティによって文化的・社会的に保護されてきたこと、(2)主要な現金稼得手段であるラム酒の材料や薬物として利用されていることに加えて、儀礼や集会をおこなう場としても重要であること、(3)半乾燥地域にあたるマダガスカル南部で、旱魃の際の救荒食物として利用されること、(4)タマリンド森林に生息するキツネザル類と相利的関係にあること、などを明らかにした。以上のことから、マダガスカル南部のタマリンド森林が、地域の文化・社会、経済、生態との結びつきのなかで維持・保全されていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、3月に予定していたマダガスカルでの現地調査が中止となった。DNA解析実験を次年度以降に延期し、そのかわりにマダガスカル南部におけるタマリンド森林の利用に関するこれまでの情報を取りまとめ、論文を執筆した。この論文は、カメルーンの出版社(Langaa RPCIG)から来年度刊行予定の論文集(African Potentials Book Series)に掲載予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症による渡航制限や航空便の運休がいつまで続くのか現時点では不明なため、次年度の海外渡航計画(マダガスカル、アフリカ大陸、インド)がどうなるかは不確実な点が多い。ただ、マダガスカルでは感染者数が低く抑えられていることから、このままの状況が続けば、次年度の後半には現地調査を実施できる可能性がある。現地調査が難しい場合、すでに採集済のタマリンド試料を用いて実験をおこなうとともに、タマリンドの分布・利用に関する文献調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、3月に予定していたマダガスカルでの現地調査が中止になったため。新型コロナウイルス感染症の状況次第であるが、マダガスカルでは感染者数が低く抑えられていることから、次年度の後半には現地調査を実施できると考えている。
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