研究課題/領域番号 |
19K12505
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
相沢 伸広 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東南アジア / 出入国管理政策 / インドネシア / オーストラリア / タイ / 安全保障 / デジタルトランスフォーメーション / 経済成長 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の研究計画がコロナ禍の影響により世界各国の出入国管理政策に対する大きなトレンドの変化が生じたことへ対応するため、オンラインでの研究会実施、聞き取り調査を重点的に実施した。その結果、計画当初に想定されていた、ヴィザ政策をめぐるポリティクスとして、経済成長と安全保障の二つの政策目標の間での政治的調整の中でデザインされていた時代は変わり、変わって、各国の経済社会のデジタルトランスフォーメーションの深化と米中対立とそれに伴うサプライチェーンリスクに代表される地政学への対応という二つの政策目標の間での政治的調整の結果としてツールに変わりつつあることが明らかとなった。 こうした世界的な出入国管理政策の趨勢の変化によって生じている新たな課題である、デジタル政策、地政学と出入国管理政策の関係について日本、東南アジアを中心とした事例をもとに、調査・分析した結果を2022年8月、ASA(米国社会学会)年次大会で研究発表した。またその際、高度人材の呼び込みをめぐるヴィザ政策、米中対立における制裁ツールとしてのヴィザ政策の用法について調査を実施した。こうした出入国管理政策の変化の震源となっている米国の動向について精査し、その結果アジア、とりわけ東南アジアに対してどのような政策的インパクトをもたらしているのか、加えて豪州におけるコロナ禍にたいする出入国政策がもたらした東南アジアへのインパクトについても調査を実施した。 また、継続している豪州オーストラリア国立大学の連携研究の一環で、2022年2月に日本ー豪州ー東南アジアのエンゲージメントのため、ポストコロナ時代の労働市場を含めた人材環流のための新たな移民政策、出入国管理政策について、研究会にて討議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響による出入国管理政策の大幅な変更に伴い、研究方針を大きく修正する必要が生じた。また、2022年度4月-12月にかけて、東南アジアとりわけインドネシアやタイにおける実地調査がコロナ禍や燃料価格高騰による社会情勢の影響で叶わず、調査に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度前半にタイ、インドネシアを中心とした実地調査を実施し、出入国管理政策、とりわけヴィザ政策の変化にかかる実地調査を実施する。その成果を2023年度後半にワークショップ、論文の形にまとめ、研究成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、インドネシアにおける実地調査を計画していたが、コロナ禍の行動制限に加え、インドネシアにおける燃料値上げによる各地での暴動の発生により、インドネシアにおける現地実地調査を実施することができないことが判明した。加えて、タイにおいても、当初予定していた夏季の実地調査がコロナ禍の行動制限のため、十分な調査ができる情勢ではなく、自粛せざるを得なかった。ただ、研究遂行上、フィールド調査に赴く必要があり、また現地の協力を得るために現地協力者の参画が必要不可欠であるため、暴動が令和4年10月に収束したことをうけて、現地協力者と調整の結果、インドネシアにおける現地実地調査を令和5年に実施することが可能との結論に至った。そのため、令和5年度におけるインドネシアの実地調査および、タイの現地調査を、組み合わせて実施する。
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