研究課題/領域番号 |
19K12506
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐藤 美穂 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (40607256)
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研究分担者 |
本田 純久 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (90244053)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エチオピア / 聖水 / 混合研究 / 健康希求行動 / K10 / SF-36 |
研究実績の概要 |
本研究では、エチオピア北部の修道院において聖水を治療目的に使用する人々を対象に、次の3点を明らかにすることを目的とする。1.聖水を求める人々の特性、2.聖水を求める人々の健康に関する生活の質、精神疾患の程度の評価、3.聖水にたどり着くまでの治療行動と聖水治療を求める理由。これらを明らかにしたうえで人々にとっての聖水治療の定義づけを行う。 研究初年度であった令和元年度は、エチオピアにおいて2019年10月から2020年2月にかけてフィールド調査を実施し、修道院を訪問していた203名が本研究に参加した。以下に今年度の具体的な目的とその成果を記す。 ①聖水治療を求める人々の特性: 研究参加者の203名の内訳は男性92名(45.32%)、女性111名(54.68%)であり、平均年齢は31.77歳であった。民族はその殆どがティグライで200名(98.52%)である。全体の回答者の96.06%にあたる195名がティグライ州各地から聖地にやってきた。参加者の半数以上の113名(55.67%)が独身、62名(30.54%)が既婚者、残りの28名は離婚者と寡婦・寡夫が14名ずつであった。職業については無職と回答した者が47名(23.15%)、有職者については、技術者・管理職30名(14.78%)、学生28名(13.79%)、販売・サービス業27名(13.30%)、農業19名(9.36%)が上位を占めた。 ②聖水治療を求める人々の健康関連QOL(Quality Of Life):国際的に最も広く使用される健康関連QOL尺度であり、健康に関する8つの概念から構成されるSF-36を用いた。データは現在解析中である。 ③聖水治療を求める人々の精神疾患の程度: Kessler 10 (K10)の得点分布は、平均値21.59点(最小値10、最大値50)で、標準偏差10.41であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度には、3度の試行錯誤を経て、最終的にティグライ州メケレ市にある修道院を調査実施地として選択することができた。この調査地選択の過程で、ある修道院においては、現地研究協力者と調査アシスタントが修道院関係者と思われる人物より悪質な嫌がらせ行為を受けるなど、当初予期していない事態が発生した。幸い、現地研究協力者の機転により、調査アシスタントが更なる被害を被ることなく、別の修道院に調査地を変更することができた。その後順調にデータが収集できたため、「おおむね順調に進展している」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は定性的インタビューへの参加に同意した20名から30名の参加者を対象に、鍵となる質問を中心に作成した半構造的インタビューガイドを用いながらインタビューを実施する。 ①修道院にたどり着くまでの治療行動:個々の事例についてケースヒストリ―を詳細に記述する。聖水治療が初めての行動であったか、心身の異変に気付いてからの時系列での健康希求行動、聖地に到着するまでの時間の経過、修道院を選んだ理由等について参加者の語りを採録する。 ②聖水治療を求める理由:公的保健医療機関で提供される西洋近代医学的診断と治療に関する見解、聖水治療を受ける理由、西洋近代医学による治療と聖水治療の併用に関する参加者の考えを引き出す。
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