研究課題/領域番号 |
19K12506
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐藤 美穂 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (40607256)
|
研究分担者 |
本田 純久 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (90244053)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | エチオピア / 聖水 / 健康希求行動 / K10 / SF36 |
研究実績の概要 |
2020年度は、日本ならびにエチオピアにおけるCOVID19パンデミック、さらに2020年11月、本研究調査地ティグライ州で勃発した戦争のために、2020年度に予定していた質的データ収集が実施できなかった。そのため、研究初年度に収集したデータの更なる解析を実施した。以下に新たに明らかになった調査結果を明記する。 1.聖水治療を求める人々の特性 有効回答171名の教育レベルは、高等教育以上(49名、28.7%)、初等教育(46名、26.9%)、中等教育(41名、24.0%)、教育を受けていない人(35名、20.5%)であった。聖水治療を求める人々の滞在期間は、7日以内(37名、21.6%)、8日以上49日以下(57名、33.3%)、50日以上(28名、16.4%)、不明(49名、28.7%)であった。多くの参加者(139名、81.3%)が健康目的で聖水を求めに来ており、3割以上の人々(56名)が心理社会的な問題によって聖水を求めに来ていた。また、82名(48.0%)が自身の健康問題について医師の診断を受けていると回答した。なお、具合が悪くなった時に最初にどうするか、という質問について、76名(44.4%)が公的保健医療機関、次いで69名(40.4%)が聖水を利用すると答えた。 2.聖水治療を求める人々の健康関連QOL(Quality Of Life) 本研究ではSF36を用いて調査参加者の身体的健康、精神的健康サマリースコアを算出した。重回帰分析の結果によると、身体的健康には、訪問理由、初等教育、年齢50歳以上、滞在期間が有意に関連しており、精神的健康には、訪問理由、公共交通機関の利用、第一治療選択が宗教的・伝統的治療であることが有意に関連していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エチオピアにおけるCOVID19の流行状況を鑑みながら、現地調査を予定していたが、調査地ティグライ州メケレ市において2020年11月4日、エチオピア政府軍とティグライ人民解放戦線(TPLF)による戦争が勃発したことにより、現地でのフィールド調査が困難となった。そのため、本年度実施予定であった質的インタビュー調査は、現地の状況を見つつ、研究最終年度に持ち越すことにした。そのため、本年度は、ティグライ関係の書籍で文献調査をするとともに、昨年度収集したデータの解析を進めた。よって、本研究は当初の計画よりも「やや遅れている」といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
科研最終年度は聖水治療を求める人々に質的インタビューを実施し、人々がどのような理由でどのような経過をたどり、聖水を求めるようになったのか、あるいはどのような病気や症状が聖水に適していると考えられるのか、について研究予定である。ティグライでの戦争はまだ継続中であり、調査地をティグライ州以外の場所に移して実施することも検討中である。また、エチオピアでは一般的に治安状況が悪化しており、民族間の衝突が増えてきている。調査チームの安全を確保しながら、可能なデータ収集を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、エチオピアにおけるCOVID19の流行状況を鑑みながら、現地調査を予定していた。しかし、2020年11月4日、調査地ティグライ州メケレ市においてエチオピア政府軍とティグライ人民解放戦線(TPLF)による戦争の勃発、並びにエチオピア国政府がティグライ州への通信を遮断し、現地との通信とフィールド調査が困難となった。戦争状態は現在も継続している。次年度にはこれまで得られた研究成果の論文発表、さらにエチオピアにおける質的データ収集、関連国際学会での発表などの用途に使用する予定である。
|