研究課題/領域番号 |
19K12506
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐藤 美穂 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (40607256)
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研究分担者 |
本田 純久 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (90244053)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エチオピア / 聖水 / 健康希求行動 / K10 / SF36 |
研究実績の概要 |
本研究では、エチオピア北部、ティグライ州メケレ市の教会において聖水を治療目的に使用する人々を対象に、次の3点[1.聖水を求める人々の特性、2.聖水を求める人々の健康に関する生活の質(身体的健康、精神的健康)、精神疾患の程度の評価、3.聖水にたどり着くまでの治療行動と聖水治療を求める理由]を明らかにすることを目的とする。 本年度は、調査地ティグライ州の状況を注視しつつ、初年度に収集したデータについて、解析、文献レビューを進め、国際学術誌への投稿原稿を執筆した。その際、パートタイムで雇用した研究協力員が各種地図の作成や文献整理にあたった。 量的調査から得られた結果のうち、新たな解析から得られた結果には以下が挙げられる。健康関連QOLのうち、身体的健康には、年齢、聖地での滞在期間、教育レベル、健康上の理由による聖水摂取が有意に関連し、精神的健康には、治療の第一選択が宗教的ケア、女性、婚姻状態、健康上の理由による聖水摂取が有意に関連していた。さらに、多変量解析では、聖地滞在が長いほど身体的健康度が高く、初等教育修了者、高齢者は身体的健康度が有意に低かった。一方、中年層、公共交通機関利用者、宗教的ケアを第一の治療と選択した者の精神的健康度が有意に高い、という結果が得られた。 また、日本のメディアにおいてあまり報道されない、2020年11月から継続するティグライ州での戦争の歴史的政治的背景、人道危機の現状について、執筆し、長崎大学多文化社会学部の紀要である「多文化社会研究」上に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的3である、「聖水にたどり着くまでの治療行動と聖水治療を求める理由」を明らかにする、については、可能であれば、調査地ティグライ州でのインタビュー実施を計画していた。しかし、当該年度においても、2020年11月4日に勃発した戦争が終結しておらず、また、エチオピア国内での治安状況が悪化していることにより、計画した質的インタビューを実施できなかった。 幸いにも本研究課題について、1年の期間延長を承認頂いたため、エチオピア国外での実施も検討しながら質的データを収集する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度は聖水治療を求める人々に質的インタビューを実施し、人々がどのような理由でどのような経過をたどり、聖水を求めるようになったのか、あるいはどのような病気や症状が聖水に適していると考えられるのか、についてデータを収集予定である。調査地をティグライ州以外の場所に移して実施すること前提として、学内での倫理審査変更届、新たな調査地においての調査許可申請等、必要な手続きを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、当初の研究計画通りに可能な限り調査地ティグライ州において、量的調査結果を反映させた質的インタビューを実施することを計画している。2021年度においては、戦争はティグライ州近隣州にまで拡大してしまったが、2022年3月24日にエチオピア政府が無期限の人道的休戦を宣言し、休戦から戦争の終結を期待するところである。2022年度は延長期間にあたるため、ティグライ州以外のデータ収集地を考慮に入れ、残りの予算を執行する予定である。
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