本研究では、エチオピア北部の修道院において聖水を治療目的に使用する人々を対象に、次の3点1.聖水を求める人々の特性、2.聖水を求める人々の健康に関する生活の質、精神疾患の程度の評価、3.聖水にたどり着くまでの治療行動、を明らかにすることを目的とした。本研究で得られた主な成果は以下の通りである。 聖水治療を求める人々の特性: 研究参加者の203名の内訳は男性92名(45.32%)、女性111名(54.68%)であり、平均年齢は31.77歳であった。民族はその98.52%がティグライでであった。参加者の半数以上の113名(55.67%)が独身、62名(30.54%)が既婚者、残りの28名は離婚者と寡婦・寡夫が14名ずつであった。職業については無職と回答した者が47名(23.15%)、有職者については、多い順に技術者・管理職(14.78%)、学生(13.79%)、販売・サービス業(13.30%)、農業(9.36%)であった。 聖水治療を求める人々の健康関連QOL:身体的健康には、年齢、聖地での滞在期間、教育レベル、健康上の理由による聖水摂取が有意に関連し、精神的健康には、宗教的ケア、女性、婚姻状態、健康上の理由による聖水摂取が有意に関連していた。さらに、多変量解析では、聖地滞在が長いほど身体的健康度が高く、初等教育修了者、高齢者は身体的健康度が有意に低かった。一方、中年層、公共交通機関利用者、宗教的ケア第一選択者の精神的健康度が有意に高かった。 治療行動:最も一般的なパターンは、最初に公共の保健医療施設(n=76)にケアを求め、次に聖水(n=33)を求める人であり、次に最初に聖水(n=69)を求め、その後に公共の保健医療施設(n=16)にケアを求める人であった。伝統的な治療から始めた人はほとんどいなかった。 上記を英語で記した論文を査読付き学術誌に投稿中である。
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