研究課題/領域番号 |
19K12508
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小針 進 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (40295548)
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研究分担者 |
濱田 陽 帝京大学, 文学部, 教授 (70389857)
小倉 紀蔵 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80287036)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日韓関係 / 知日派 / 日本文化論 / 韓国文化 / オーラルヒストリー / 李御寧 / 韓国社会 / 縮み志向 |
研究実績の概要 |
オーラルヒストリーの意義のひとつは、既存の文字記録だけでは知りえない話を得られることである。会話でpushするうちに、話者の記憶の片隅から引き出す(pull)ことができる。知日派知識人は両国の政治、経済の変動とは異なる次元で、日本と韓国の文化を柔軟にとらえる傾向が強く、オーラルヒストリーのメソッドによって、その歩みを知ることそのものが今日的の意義を持つ。 彼ら/彼女らの多くは、日本の学問に接して、日本文化に精通し、日本語が達者であるからだ。彼ら/彼女らは、次々に一線を退いており、鬼籍入りもしている現実がある。2020年5月には崔書勉氏(国際韓国研究院院長)、2022年2月には李御寧氏(初代文化部長官)が逝去された。いずれも、科研費を活用した研究により、オーラルヒストリーのプロジェクトを実施してきた。崔書勉氏に関しては、2022年2月に『崔書勉と日韓の政官財学人脈―韓国知日派知識人のオーラルヒストリー』(同時代社)として刊行することができた。 いっぽう、本プロジェクトの中心である李御寧氏に関しては、2019年度はソウルを3回訪問して、同氏へのインタビューを実施してきた。幼い頃の言語生活や読書、植民地時代の記憶と学校生活、解放前後の激動期、ソウル大学時代の生活、文芸上の論争、梨花女子大での教職生活、東京や京都での在外研究生活、『「縮み」志向の日本人』についてなど、氏の歩みと思考に関して、幅広い内容を聴取することができた。 ところが、コロナ禍により2020年度はインタビューの音源をもとにして、信頼性のある反訳(文字化)の第一段階の作業に留まった。2021年度は代表者と分担者による校閲と確認作業をリモートと郵送のやり取りで開始したものの、予定していた話者や話者と関係する現地協力者と接触しながらの校閲作業に関しては、先送りする結果となった。話者は療養に入り、前述したように逝去された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オーラルヒストリー実施分の記録化にかかわる諸作業が反訳と代表者・分担者のチェックが第一段階に留まっている。話者(李御寧氏)への確認作業および追加インタビューも行うことができなかった。 いずれも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。2020年、2021年と各自の本務先(大学)でのコロナ禍による諸対応の余波、さらには出張制限(海外渡航、県を跨ぐ移動の規制)で、話者とその関係者、代表者と分担者の共同作業を行うことができなかったからである。 さらに、話者が闘病生活に入ったことから、リモートによる確認作業や追加インタビューも不可能となり、2022年2月に逝去された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年は、オーラルヒストリー実施記録(反訳)への確認・校閲作業を本格化し、2023年3月までに報告書を刊行させる。報告書刊行にあたっては、話者が逝去されたため、追加インタビューは断念するが、関係者の確認・校閲する作業の協力を現地(ソウル)で得たいと思っている。このためには、コロナ禍であっても、韓国への出張を何からの形で実施する必要がある。また、報告書から、一般の刊行物に結び付けるための調査も実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナ禍の余波によって、研究や作業を留保せざるを得ない状況が続き、予定していた支出負担行為行為がなかったため。
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