研究実績の概要 |
研究課題では、グローバル皮革産業におけるネットワークの研究と産業構造の大規模な変革とともに、サステナビリティを中心とした体制へと変貌しつつつあるグローバルファッション産業を研究した。前回の科研での研究は「革をつくる人びと」に結実したが、本研究では研究成果として「皮革とブランドー変化するファッション倫理 」 (ISBN: 9784004319757)を岩波書店より刊行した。「皮革」をめぐり、意図したサンタクローチェを中心としたネットワーキングの研究はグローバル皮革産業全体のネットワーキングの研究として展開され、さらに現代におけるファッション倫理の分析として結実した。著書では被差別の歴史から最先端ファッションまでを概観しつつ「ブランド」に求められる「信頼」,その信頼と関連する「倫理性」について比較文化論的に論じた。皮革づくりに携わった被差別マイノリティ集団を欧州・アジア・日本を縦断して論じ、英国におけるギルドにおける皮革生産に携わった集団との相違を論じた。また、高級皮革製品の「ブランド化」についての考察をすすめた。現代のブランド化の背景としての大量生産にかかわる19世紀の機械化とそれ以降1980年代の産業の大規模なグローバル化、その功罪について論考をおこなった。「高級ブランド」の大量生産が可能となった1980年代以降の大規模なグローバル化した生産体制に対しての「批判」のディスコースとしての新たな産業倫理の勃興を論じ、日本における皮革産業の行く末を「サステナビリティ」との相関関係において論じた。 今後の研究の展開としては、20年ぶりに改訂されるRoutledge社刊のConservation of Leather and other Materials(2026年度刊行予定)を欧米の皮革専門家らとともに共同執筆にかかわることとなった。
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