研究課題/領域番号 |
19K12512
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インドネシア / 日本 / ケア / 移民労働者 / 移民家族 / ウエルビーイング / 技能実習生 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
(本文) 本研究の目的および研究実施計画に従い、2019年度(初年度)の4月から7月には、日本で働くインドネシア人移民労働者(茨城県の漁業・水産加工工場に勤務する技能実習生約60名)に対する調査を中心に行った。主に家族構成や出身地の社会状況、家族の経済状況、家族の健康状態等の基本的なデータ収集を行うとともに、技能実習生らの日本におけるネットワーク構築のあり方および情報通信技術(ITC)の利用状況に関する調査を実施した。 8月および9月には、インドネシア・西ジャワ州およびテゥガル州における調査を実施し、1)元日本の技能実習生であった5名およびその家族、2)調査当時に日本の技能実習生であった2名のインドネシアの家族に対する聞き取り調査を実施した。具体的には、上述の1)では、移民労働者の帰国後の家族の再編成に関して、上述の2)では、家族の社会・経済状況、家族の健康状態、移民家族間におけるネットワーク構築のあり方およびITCの利用状況に関して聞き取り調査を実施した。 以上を通して、本報告を作成時点では、移民家族のウェルビーイングに影響を与える要因が、元移民労働者からの一方向的なものではないこと、ネットワークの構築のあり方がジェンダーや社会・経済階層によって偏りがあること、海上・船上という特殊な職場である漁業分野で働く技能実習生に限ってITCの利用状況に制限があることが明らかになった。移民労働者と母国の家族のウェルビーイングを明らかにするために「ケアの循環」に注目している本研究は、初年度の研究成果によって、今後増加することが予測される日本で働く移民労働者(技能実習生)の特徴を捉えた点で重要かつ意義がある。 これらの研究成果の一部は、学位論文および日本、インドネシアで開催された研究会等で発表し、研究者から意見や助言をいただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本、インドネシアにおける現地調査および学位論文提出、研究発表を通して、本研究の目的である、移民送出国の高齢化問題と関連付けたインドネシア側の家族の福祉の変容に関する一部の研究成果を提示した。研究発表を通して、次年度以降の課題は明確であり、初年度の研究はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、世界的な新型コロナウィルス感染症拡大の収束を待って、インドネシアにおいて移民家族への聞き取り調査を行う予定である。調査対象者は、日本を就労地としていた移民労働者とりわけインドネシア人元技能実習生およびその家族となるが、インドネシアへ渡航の見通しがつかない現状を鑑み、新型コロナウィルスの影響によりインドネシアへ帰国できなくなった者、および帰国を延期した者など、現在日本に滞在しているインドネシア人技能実習生への聞き取り調査を継続的に実施する。また、海外渡航が制限されている期間中は、積極的にSNS等を利用しインドネシアにおける調査対象者と密に連絡を取る。 なお、本研究のテーマの軸となるケアに関し、移民家族は世界的な感染症の蔓延という状況をどのように乗り越えていくのか、という新たな視点を追加して調査を実施していきたい。その上で、日本国内における研究会等が開催できるようになれば、中間報告として研究成果を社会に発信・貢献する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定していたより安くなったため、次年度に繰り越した。次年度の物品費として使用する予定である。
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