研究課題/領域番号 |
19K12512
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インドネシア / 日本 / 移住労働者 / ケア / ウェルビーイング / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、インドネシアにおける調査・研究が実施できなかった。そのため、日本国内において、インドネシア人移住労働者(技能実習生)を対象として、Webアンケートの実施、聞き取り調査等を行った。アンケートの内容は、新型コロナウイルス・パンデミック下における生活状況の変化である。アンケートは、調査対象者の受入れ団体の協力の下、SNS(FacebookやWhatAPPのグループ機能を利用)を用いて配信・回収した他、対面での回収も行った。また、技能実習生受入れ団体によるリモート講演会を実施し、コロナ禍における生活状況の変化に関する現状把握に努めた。講演会では、入国前の日本語学習が対面ではなくオンライン講習で実施されるようになった点、とりわけインターネット接続環境の悪い地域出身者の学習不足、および入国後の不要不急の外出制限、従来実施してきたエクスカーションの中止、入国や帰国時期の延期、コロナ・ワクチン接種までの過程等が報告された。 アンケート結果からは、新型コロナウイルス・パンデミック下において移住労働者の生活状況が変化していること、特に労働時間以外の余暇の使い方が変化していること、多くの人がSNS等を利用して母国の家族や親族との連絡に費やす時間がこれまで以上に増加し頻繁に連絡を取っていることが明らかとなった。家族とのやり取りには、日本で新型コロナワクチン接収を受けるかどうかの相談も含まれており、国を越えた「感染症対策に関するケア」の状況が生じているといえた。また、講演会での報告からは、入国前の日本語学習不足が来日後の日本社会における日本人との交流を消極的にさせていることや外出制限による地域コミュニティとのかかわり方が減少していることが明らかになった。日本におけるコミュニケーション機会の少なさが今後の生活にどのような影響を与えるかが課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、インドネシアにおける調査は実施できなかった。そのため、本年度は日本に滞在するインドネシア人移住労働者を対象とした調査を中心に行ってきたが、面会にて聞き取り調査が実施できたのは新型コロナウイルス感染拡大が収束してきた時期に1度のみである。調査はWebアンケート、SNS等を利用しての聞き取り調査が主となった。また、現在の調査地の他に比較対象として2か所の調査地における調査研究を実施する予定であったが、いずれも感染拡大を理由に中止・延期となった。以上のことから、本年度の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、1)延期となった2地域での調査を実施する。2)日本に滞在するインドネシア人移住労働者と母国の家族が新型コロナウイルス・パンデミック下における生活状況の変化をいかに共有しているかについて、ケアという観点から明らかにする。3)研究成果を論文にまとめて学会誌等に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していたインドネシア調査のための旅費を使用しなかった。次年度は海外調査の旅費として使用する予定だが、新型コロナウイルス感染症拡大により海外調査が実施できなければ国内調査への旅費およびWebアンケート等に関わる調査費用とする。また、成果報告書の刊行費用に充当する。
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