研究課題/領域番号 |
19K12513
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
牛田 千鶴 南山大学, 外国語学部, 教授 (40319413)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パラグアイ / バイリンガル教育 / グァラニー語 / 国民アイデンティティ / 初等教育 |
研究実績の概要 |
4~7月においては、申請調書に記した通り、「本研究課題に関する研究書や論文を精読し、パラグアイ政府の公表する教育改革計画や統計資料、代表的研究機関による報告書や各種研究成果等、準備段階において可能な限りの情報収集を行う」ことができた。文献収集についてはその後も引き続き、パラグアイの教育状況ならびに言語教育政策に関連した研究書・論文等を入手しつつ、概ね計画通りに進んでいる。 その一方で、本研究遂行上、極めて重要な位置づけをなす現地調査については、残念ながら一度も実施することができなかった。その理由としてはまず、8月に、所属する学科の選択必修科目である「海外フィールドワーク」の引率業務を担当せざるを得なくなってしまった上に、その引率期間直後の日程で、大学院9月修了希望者への学位授与の可否を決める研究科委員会が設定され、連続して少なくとも10日間の不在が可能となるような出張日程を組むことができなくなってしまったことが挙げられる。その埋め合わせとして春期休暇に出張を計画したが、学部長の任にあることから、入試関連業務の続く2~3月に一週間以上の不在をすることについて副学長からの許可が得られず、現地調査は見送らざるを得なくなった。(仮に許可が得られていたとしても、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、渡航は中断を余儀なくされていたものと考える。) また、研究成果報告にしても、2月16日の北米エスニシティ研究会例会ではかろうじて発表ができたものの、3月22日に開催予定であった日本ラテンアメリカ学会中部日本研究部会については、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、プログラムに名前の挙がっていた他の2名とともに、発表の機会を逸することとなってしまった。 感染状況が終息に向かうことを前提に、2020年度には是非とも、現地調査および学会報告を実現したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」欄にも記した通り、年間を通じて一度も現地調査に赴くことができなかった。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月に開催予定であった日本ラテンアメリカ学会中部日本研究部会が中止となり、「学力と言語文化をめぐるラテンアメリカ地域の教育改革」と題する報告も実現することはできなかった。また、同時期に計画していた在東京パラグアイ大使館への訪問も、延期せざるを得なかった。 概ね計画通りに進んでいるのは、資料収集においてである。El bilinguismo paraguayo: usos y actitudes hacia el guarani y el castellano や Guarani aqui. Jopara alla : reflexiones sobre la (socio)linguistica paraguaya をはじめ、貴重な文献も順調に入手できている。このほか、青砥清一氏や青木芳夫氏、江原裕美氏らによる日本語での論攷も読み進めている。また研究成果報告に関しては、まだ新型コロナウイルスの感染拡大状況がさほど深刻とはみなされていなかった2月に、「ラテンアメリカの多民族・複文化諸国における教育改革と二言語教育の取組」と題して、北米エスニシティ研究会(於:ウィルあいち 第2会議室)で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最も遅れをきたしているのは、パラグアイでの現地調査である。新型コロナウイルス感染拡大状況の推移を見極めながらではあるが、今年度中に何とか実現できればと願っている。仮に現地調査が困難と判断される状況下にあっても、アスンシオン・カトリック大学元教授 Bartomeu Melia 氏(民俗学)、ならびに国立アスンシオン大学の Dominique Demelenne 氏(社会学)や Rodolfo Elias 氏(教育学)ら、代表的先行研究を刊行してきた専門家には、オンラインを通じてなど、何らかの形で聞き取り調査を試みたい。パラグアイ教育科学省(Ministerio de Educacion y Ciencias)や国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(The United Nations Economic Commission for Latin America and the Caribbean)、ラテンアメリカ社会科学評議会(Consejo Latinoamericano de Ciencias Sociales)、イベロアメリカ機構(Organization of Ibero-American States)パラグアイ事務所等が刊行する貴重な報告書についても、引き続きの収集に努めたい。 尚、2019年度中に「ラテンアメリカ諸国の学力状況と複言語社会における教育平等化の取組」と題して原稿を執筆した共著(『グローバル課題とラテンアメリカ』(仮))は現在、編者2名による編集作業中であるが、2020年度中には刊行される予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属学科が開講主体となっている海外フィールドワーク科目の引率業務、9月修了を希望していた研究指導生の論文審査及び合否判定会議の日程による制約、学部長としての諸業務、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、当初計画していた通りの研究遂行が困難となってしまったことが、次年度使用額の生じた主な理由である。 新型コロナウイルス感染症の今後の社会的影響の推移を見極めながらではあるが、今年度は是非とも現地調査を実施し、執行を繰り延べた予算を滞りなく有効に活用できればと願っている。
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