研究課題/領域番号 |
19K12515
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坂下 史子 立命館大学, 文学部, 教授 (10594129)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アメリカ黒人 / 人種 / 暴力 / 公的記憶 |
研究実績の概要 |
研究テーマに基づき、2019年度は関連文献の収集およびレビューを行い、記憶の場や公的(集合的)記憶、トラウマ、ダークツーリズムなど、本研究を遂行するにあたって重要となる概念の理論的な位置づけについて確認するとともに、アメリカにおけるリンチおよび人種暴力の記憶に関する既存研究を整理することに努めた。また、後述する③の文献調査を進めた。 本研究では複数年にわたり、アメリカにおいてリンチの歴史がどのように記憶されてきたかを、近年の博物館展示や地域レベルでの記憶化の取り組みなど様々なレベルから包括的に検討することを目指しており、具体的事例として、①ワシントンDC 国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館の展示(2016年秋開館)、②アラバマ州モンゴメリー市「平和と正義のための国立記念碑」(2018年春完成)、③ジョージア州 1946年のリンチ事件「再演」行事(2005年より毎年7月開催)、の3つを取り上げることにしている。本研究課題の初年度となる2019年度は、導入的研究成果となる「まちの歴史にリンチを刻むーアメリカにおける人種暴力の記憶化」(『歴史評論』834号(2019年10月)、89-98ページ)を発信した。この研究成果は、③の文献調査に、過年度に行なった②の予備調査と前回の研究課題である「アメリカの人種暴力の歴史にみる記憶の政治学ーエメット・ティル事件を例に」によって明らかになった知見を加味して、ジョージア州、アラバマ州、ミシシッピ州の事例を比較検討したものである。これにより、かつてリンチ件数が最も多発していた南部3都市における現在の多様な記憶化の取り組みを明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べた通り、研究テーマに関する文献を収集し、既存研究を整理することはおおむね遂行できた。また、具体的事例として挙げている①ワシントンDC 国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館および②アラバマ州モンゴメリー市「平和と正義のための国立記念碑」に関しては、前の研究課題を遂行した際に予備調査を行なっていたことから、これをもとに本研究課題の初年度である2019年度に②に関する導入的研究成果をまとめることができた。他方、①の導入的研究成果については、2020年4月初旬に開催されるOrganization of American Historians(OAH)年次大会において発表する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い学会が中止となり、諸事情によりリモート参加もできなかったことから、実現しなかった。このためOAH参加の際に計画していた①の視察および関係者へのインタビューも延期せざるを得なくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度も引き続き、研究テーマに基づいたリサーチを進める予定ではあるが、当初夏季または春季休暇中に予定していた①~③の海外調査を実行できるかどうかは、今次のパンデミックの収束状況次第となる。とりわけ、2020年度に計画していた③ジョージア州での再演行事(毎年7月)への視察は次年度に後ろ倒しせざるを得ないため、少なくとも上述した①の視察については当該年度中(おそらく春季休暇中)の実施に向けて再調整したい。これらの視察が進まなければ当該研究課題自体の遂行が困難になるが、この間新たに発表された文献を追加収集したり、すでに収集した一次資料の分析を継続するなどして、研究を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査が中止になったため、次年度に繰り越して使用する計画である。
|