研究課題/領域番号 |
19K12524
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
淑瑠 ラフマン 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 博士研究員 (30467097)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域創生 / 地域人材育成 / 地域文化 / 能登里山里海 / 和歌山みなべ・田辺 / 岐阜長良川 / 世界農業遺産 / 持続可能な社会 |
研究実績の概要 |
「地域再生」や「持続可能な社会の構築」を論じる時に地域文化の再生は避けて通れない課題である。継承、保護といった文化そのものの課題だけではなく、地域社会に与える社会的な機能の回復や伝統的な知識の発掘といったその複合的機能の再生も注目されている。本研究では、石川県能登半島、岐阜県長良川地方、和歌山県みなべ・田辺地方の3つの「世界農業遺産」登録地域で、文化の複合的機能の再生と地域の価値を新しく創り生み出すために奮闘している若者の動向に注目し、調査を実施することで、日本社会における地域文化の再生を通じた「持続可能な社会」の実現の現状を把握し、文化再生における地域的な課題解決のヒントを探るものである。 2019年度は主に和歌山県みなべ・田辺地方と能登半島の「世界農業遺産」に登録されている地域で活動事例の調査を実施した。調査対象は45歳以下のU・Iターンや地元の若者がリーダー的立場に立って、地域文化の活用による「地域再生」や「持続可能な社会の構築」を目指している取り組みである。具体的調査内容としては、4回に渡って和歌山県に出向き、5名の活動事例の取材を行った。また、能登においては4名の活動事例に対する取材活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事例調査実施においては、能登半島や和歌山県みなべ・田辺地方を中心に多くの地域に出向き事例調査を実施してきた。今までの人脈を十分に活かして、概ね順調に進展し、多くの調査対象に対する取材を行うことができた。具体的には、和歌山県庁やみなべ・田辺町の行政関係者のご協力の頂きながら、調査対象との関係を順調に築き上げることができた。さらに、関連する多くの地域団体とのやりとりを活発に行い、地域文化を活用し、地域の社会的機能の回復に向けての動きからアプローチし、活動内容や理念、運営体制、連携体制、運営資金、行政支援、運営メンバーのパーソナルバックグランドや動機、活動に対する社会的なインパクトなどの項目で調査することができた。これらを通して、当地域における、文化の複合的機能の再生と地域の価値を新しく創り生み出すために奮闘している若者の動向の実態を把握することができた。 しかし、COVID-19の影響で、年度末に、当初予定していた岐阜県や能登での調査実施が不可能になり、予定していた調査活動ができなくなった。特に、岐阜県長良川地方での行うべき、初年度おける、地域での調査対象との関係づくりアプローチは困難となったため、進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、 まず、和歌山や能登で集めた取材資料に基づいて、地域の歴史・地理的背景、近代の様々な動向などの学術的な先行研究を照らし合わせて、彼らの活動を文化と活動の2つの側面から現状、課題、傾向などを分析し、検証を行う。 次に、同様な取材研究活動を岐阜県長良川地方の「世界農業遺産」に登録されている地域でも実施する。COVID-19の影響を注視しながら、環境が整い次第、調査対象との関係を築き揚げた上で、調査実施していく。 最終的には、地域文化の再生を通じた「持続可能な社会」の実現のために、文化が地域の社会的機能の回復において果たす役割をコミュニティ構築、資源活用、後継者の育成、学校教育などの面で総合的に分析を行い、その成果を論文執筆、現在取り組んでいる地域人材育成、それぞれの地域創生活動に活かす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究対象者の情報収集に経費(謝金)がそれほどかからなかったことと、COVID-19の影響で一部の調査が実施できなかったためである。
次年度からは数多くの研究取材、インタビュー、現地調査を計画しており、COVID-19が落ち着いたら速やかに活動を展開し、これらの研究活動に経費を充てることとしている。
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