研究課題/領域番号 |
19K12525
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 千晶 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特定研究員 (80722058)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東アフリカ / ザンジバル / 民衆のイスラーム / 精霊 / 女性の病 |
研究実績の概要 |
1年目である本年度は、世界的な新型コロナウイルス感染症蔓延のため、タンザニア連合共和国への渡航を見送った。そのため、やむを得ず国内において先行研究の整理と分析を行った。 また、これまで実施した研究内容についても再考し、研究発表を行った。その内容は、第5回イスラーム世界の共生に関する研究会(オンライン開催)において、「東アフリカにおけるタリーカをめぐる共生と敵対」というタイトルで発表した。この発表では、タリーカ(イスラーム神秘主義教団)が民衆の間で広がった理由として、主要なタリーカの到来と奴隷制度廃止の時期が重なったことを指摘した。解放奴隷は社会的に疎外される存在であったが、タリーカの平等主義的な考え方や身体を動かして行う宗教実践などをとおして、彼らの多くがタリーカに加入し、その結果としてイスラーム化も進んだことを示した。また、社会的な表舞台に出ることの少なかった女性たちも積極的にタリーカの宗教実践に参加し、コミュニティーの中での存在感を示したことを明らかにした。タリーカの宗教実践は、伝統医療の分野でも用いられることや、伝統医療の患者の90%以上は女性患者であることから、タリーカの活動に関連づけた研究は今後も本研究を進展させるために重要であると考える。この発表内容は、東長靖・イディリスダニシマズ・藤井千晶(編)『イスラームの多文化共生の知恵-周縁イスラーム世界のスーフィズムに着目して』において「東アフリカにおけるタリーカをめぐる共生と敵対」というタイトルで論文を発表した。 なお、上記の論文集では、東・西アフリカや南アジア、東アジア、東南アジア、中央アジアなど、中東に対して「周縁」と位置付けられてきた地域のイスラームの共生について論じており、ややもすると「過激な」「急進的」イスラーム像が先行する日本において、よりバランスの取れたイスラームの理解につながるような問題提起を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況がやや遅れた理由は、大きく2つある。 第1に、タンザニアでの調査ができなかったことである。当初の計画ではタンザニアで実施する調査内容をもとに研究を進める予定であったため、現地調査ができなかったことは、研究の進捗状況にも大きな影響が出た。 第2に、4月の緊急事態宣言の発出にともなって、子どもの保育園が5月初旬まで臨時休園となったり、緊急事態宣言解除後も保育園登園のための健康管理が厳しくなったことである。それにより、発熱によって子どもを家でみる機会が増えたため、思うように研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進させるためには、新型コロナウイルス感染症の世界的な問題が解決すれば、直ちにタンザニアに渡航し、予定しているフィールドワークを実施する。そのために、未だ新型コロナウイルス感染症が蔓延している現在は、国内で可能な先行研究の整理や文献調査、質問項目の作成などを引き続き進めておくことが重要である。 また、現地調査が可能となった際は、新型コロナウイルス感染症の発生以前とは異なる社会状況であることを想定して調査を行う。調査地であるタンザニアは、周辺の国々に比べて新型コロナウイルスに対する危機意識が低いように見受けられるが、新型コロナウイルスの蔓延が招いた人々の考え方の変化や社会的影響にも十分に留意した上で、調査を実施する必要がある。 国内では、このコロナ禍で、研究会や意見交換をオンラインで実施する環境が整備された。今後もオンラインを活用して活発に研究会や研究者同士の意見交換を行うことで、共同研究も含めた成果が発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウィルス感染症の影響で海外調査ができなかったことや、国内においても出張の自粛、学会や研究会のオンライン開催が重なったため、旅費の支出がなかった。また、海外調査の延期により、現地調査で予定していた謝金の支払いもなかった。その一方で調査協力者とのオンラインでのやり取りのためにスピーカーやWebカメラなどの計画外の出費が生じた。また、研究内容は国内での文献研究を中心に進めたため、書籍購入の出費が多かった。 現在(2021年4月)の国内と東アフリカの新型コロナウィルス感染症の状況を考慮すると、2021年度も海外調査は難しい見込みである。その場合は2020年度と同様に旅費や人件費・謝金の出費は見込めないため、国内での文献調査を推進するため、書籍購入に支出する予定である。
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