2022年度は、実施計画にそって次の3項目にわたる研究活動と、最終年度としての総括を行った。
1.西方アラブ地域におけるラスム学(クルアーンの綴字と諸記号に関する学問)の史的展開とクルアーン出版の現況に関する調査および考察を継続して行った。特に、ラスム学の骨子となる5原理(省略、追加、交替、ハムザ、分かち書き)を整理し、サウディアラビアの王立印刷所が刊行するマディーナ版ムスハフ(クルアーンの刊本)を対象に、西方におけるラスム学の伝統的規範がどのように反映されているかについて検証を進めた。その考察と検証の結果を、国内の研究会および国際カンファレンスにて、研究成果の一部として公表した。 2.カイロ・アラビア語アカデミーのムスタファー・ユースフ氏を招き、アラビア語学における類推(キヤース)と現代語彙の造語法に関する研究会を実施した(Zoomによるオンライン開催)。特に、現代用法における正誤判断の基準とその課題について討論を行い、本研究課題が目指すアラビア語文法レファレンスの刊行に向け、助言と知見の提供を受けた。 3.イスラーム文明とアラブ文学に関する国際シンポジウムを企画・開催し、アラブ韻律学の伝統とハリール学派におけるムタダーラク調の位置付けについて研究発表を行った(使用言語:アラビア語)。その成果を発展させ、アラブ詩と韻律学に関する教科書(学習用テキスト)の章の一部と各事項を執筆した。具体的には、正調と破調、韻律解析の手順、詩の破格用法、16律式に関する各章(ワーフィル調、ムタカーリブ調、ムタダーラク調、マディード調、ラジャズ調、ムジュタッス調)をまとめ、刊行・公表へ向けた準備を整えた。
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