研究課題/領域番号 |
19K12527
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栗本 英世 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (10192569)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南スーダン / 失敗国家 / 内戦 / 民族紛争 / 平和構築 |
研究実績の概要 |
2019年8月、南スーダンの首都ジュバで、国会議員や元大臣等に対するインタビューを実施し、失敗国家の実態と和平合意の実施に関する展望について情報を収集した。ジュバの日本大使館でも、南スーダンの政治情勢と今後の展望に関する情報交換を行った。また、東エクアトリア地方ラフォン郡で進行中の、パリ人とロトゥホ人とのあいだの暴力的な民族間紛争について、当事者たちをインタビューし、情報を収集するとともに、自然資源の平和的な共同利用の可能性についても議論した。あわせて、中央政府が機能不全の状態に陥っている状況下で、州と郡という地方レベルの行政がいかに機能しているのか、いないのかについて情報を収集した。国家レベルでは「失敗」しても、地 方行政のレベルでは、ある程度統治が機能し、法と秩序の維持が保たれていることが明らかになった。南スーダン訪問前には、国境を接するウガンダ北部に滞在 し、スーダン内戦中から現在に至る、国境を越えた人とモノの移動に関する調査を実施するとともに、双方の政治的不安定が相互にどういう影響を及ぼしてきたのかに関する情報を収集した。また、パラペック難民定住地において、南スーダンのパリ人難民に対するインタビュー調査を実施した。 ケニアとイギリスでは、南スーダンと北東アフリカ地域を専門とする研究者たちと懇談し、情報交換を行うとともに、オックスフォード大学ピット・リヴァース博物館で、イギリス統治時代の南スーダンに関する、とりわけ民族間関係と植民地政府と諸民族との関係に関する文献資料の閲覧と調査を実施した。 2020年3月には、ニューヨークの国連本部を訪問し、平和維持活動の担当者たちと懇談と情報交換する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の外務省による安全情報では、南スーダンの首都ジュバは「危険度3」となっているが、当初の予定どおり現地に滞在し、計画どおりに調査研究が実施できたことの意義は大きかったと考えている。ウガンダ北部地域は、「危険度2」であるが、この地域でも、交通が不便な南スーダンとの国境地帯を広く調査することができ、国境を越えた人とモノの移動が、南スーダンの政治・経済・社会に及ぼしてきた影響についての資料を収集することができた。ケニア及びイギリスにおける南スーダン、北東アフリカ地域の研究者との情報交換と研究連絡、及び文書資料館におけるアーカイブ資料の調査も、予定どおり遂行することができた。 また、南スーダンは、2005年以降、国連の平和維持ミッションが継続して展開しており、平和構築と国家の再建に大きな役割を果たしてきた。2020年3月に、ニューヨークの国連本部を訪問し、平和維持活動の担当者たちと懇談と情報交換する機会を得たことは、大きな意義があった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に引き続き、南スーダンの首都ジュバでのフィールドワークと関係者へのインタビューを実施するとともに、ウガンダとケニアにおいて、難民となっている南スーダン人に対するインタビューを実施する。また、イギリスとケニアにおいて、南スーダン研究者や紛争研究者との研究連絡と情報交換を行う。加えて、ジュバとイギリスの公文書館・アーカイブズで、歴史文書の収集を行う。南スーダンの内戦と失敗国家に関する学術的文献、およびインターネット上で公開されているニュースや報告書、さらに未公開の文献資料を収集し、分析する。 アフリカ諸国及びヨーロッパ諸国における、新型コロナウイルス感染の拡大のため、今年度は当初の予定通り海外渡航が実施できない可能性がある。渡航ができない場合は、国際電話、電子メール、及びテレビ会議などの手段を通じて、現地のインフォーマントとのコミュニケーションをはかり、現地調査の代替方法とするとともに、文献研究と、国内外研究者との討論及び情報交換・研究連絡に、研究の力点を移すことで対応する予定である。
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