研究課題/領域番号 |
19K12527
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栗本 英世 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (10192569)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南スーダン / 失敗国家 / 内戦 / 民族紛争 / 平和構築 |
研究実績の概要 |
南スーダン共和国では、2019年に調印された二度目の和平合意が、2020年2月にようやく実施されて暫定国民統一政府が成立し、2013年12月勃発した内戦がようやく終結した。しかし、2021年3月の時点でも、和平合意の完全な実施は滞っており、和平合意にいまだ調印していない有力な武装集団も複数存在する。内戦に再燃に至るような大規模な武力衝突は発生していないが、各地で中小規模の衝突や襲撃事件が断続的に続いている。2005年1月に締結された包括和平合意によって第二次スーダン内戦が終結した時点、および2011年7月に南スーダンが独立した時点で、人びとが平和と安定、福利の向上と経済的発展に寄せた期待は裏切られ続け、南スーダンは典型的な、あるいは最悪の失敗国家であり続けている。以上の状況は、南スーダンは失敗国家の研究対象として適合性が高いことを意味している。 本研究課題は、コミュニティや民族集団、支配エリート、援助機関、国連や国際社会など、多元的な視点から、フィールドワークと文献調査に基づき、失敗国家の生成のあり方を明らかにすることを目的としている。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の結果、南スーダンにおけるフィールドワークも、ウガンダにおける南スーダン難民の調査、およびイギリスにおける文献調査や研究打ち合わせを実施することができず、当初計画どおり研究課題を推進することができなかった。代替手段として、南スーダン内外の当事者や研究者との電子メール、国際電話やオンライン通信システムを通じて、情報収集と研究連絡を実施した。また、文献調査は当初の予定どおり実施した。 なお、これまでの成果の一部をまとめた英語論文が論文集の1章として2020年末に刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度と2019年度は、当初の計画どおりに進捗したが、2020年度は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大状況のため、南スーダンにおける現地フィールドワークを実施できなかった。また、ケニア、ウガンダ、およびイギリスにおける対面での研究連絡や打ち合わせも実施できなかった。本研究課題は、フィールドワークに基づく一次資料の収集と蓄積を主要な方法としているため、研究課題の進捗がやや遅れる事態となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2021年度は、これまでの成果を総括するとともに、学術論文・著書として刊行する準備を進める。また、各国と地域における新型コロナウイルス感染の縮小状況を見極めながら、南スーダンとウガンダにおける現地フィールドワーク、およびケニアとイギリスにおける研究連絡と打ち合わせを可能な限り実施する。オンラインによる情報収集、打ち合わせ、および会議という手段も積極的に活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の予算の大部分は海外調査のための旅費に充当されているが、世界的な新型コロナウイルス感染拡大状況のため、南スーダンにおける現地フィールドワークと、ケニア・ウガンダ、およびイギリスにおける当事者や研究者との研究連絡と打ち合わせが実施できなかったことが、次年度使用額が生じたことの直接的な原因である。 来年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、繰り越された予算は、数週間程度の海外調査の実施と、最終成果とりまとめの準備に使用する予定である。
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