研究課題/領域番号 |
19K12529
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水野 敦子 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10647358)
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研究分担者 |
深川 博史 九州大学, 経済学研究院, 教授 (30199153)
松田 正彦 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60434693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミャンマー / 農村 / 労働力移動 / 農業労働力 / 農業機械化 |
研究実績の概要 |
本研究は、対外開放下のミャンマー農村における人口停滞と社会経済構造の変容の特質とメカニズムについて解明することを目的とする。そのため、代表者が過去に調査を実施した農村(都市近郊農村および遠隔村)において、村落調査及び世帯悉皆調査を実施することを計画している。本年度は、資料収集、分析を進め、人口センサスと農業統計から、農業労働力の相対的不足について検討した。2月には、現地調査を実施し、農業灌漑畜産省農業計画局と意見交換を図り現地調査について承認を得た。調査候補地での予備調査を実施した。予備調査の結果の概要は、以下の通りである。 ①都市近郊農村として、2017年に調査を実施したヤンゴン管区域北部県タンダビン郡のオウッポー村(以下、OP村)を選定した。②OP村を含む近隣の米作村では、収穫作業の伝統的手刈りから機械(コンバイン)への移行が進んだ。③タンダビン郡南部において工場団地建設計画が進められており、村内居住者の農外就労機会は、一層拡大している。 ④遠隔農村として、2008年に調査を実施したマンダレー管区域ニャンウー郡のジョーピンタ―村(KP村)を選定した。⑤道路インフラ整備は建設途中であり、その完成によって劣悪であったKP村への交通アクセスが改善することが見込まれた。⑥天水畑作のKP村では、予想に反して農業機械化が遅れていることが明らかになった。⑦国際労働力移動は依然として活発であり、帰国者も増加している。出稼ぎで得た所得によって、世帯の生業が大きく変化している。なかでも、土地なしの農業労働世帯が減少していることが窺われた。 以上の予備的調査により、文献検討により予期された変化の実態確認のみならず、一部では予想に反する事象も生起していることが確認できた。予備調査によって本調査で解明すべき課題が明確になり、本調査準備を進めるうえで重要な作業を行うことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、来年度以降実施予定の本調査に向けた、予備的調査の実施を計画していた。本年度の研究実績に記載したように、関連資料の収集分析を行うとともに、現地にて関係省庁から調査の承諾を得て、予備的調査を実施することが出来た。予備的調査では、本調査の準備を進めるうえで不可欠な貴重な情報を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、関連資料の収集と分析を進めると共に、予備調査で得られた情報を精査して、本調査の準備を進める。 本調査は、まずKP村で実施することを計画している。KP村での前回の調査から12年が経過しており、可能な限り早期での追跡調査の実施が望ましいと判断したことがその理由である。 調査方法としては、質問票を用いた世帯悉皆調査を予定している。予備調査で得られた情報をもとに、質問項目を決定し、質問票を作成する。なお、この調査によって、同一村同世帯の二時点のデータを収集する。 ただし、現在、新型コロナ感染症対策に関わる出入国制限のために、現地調査の実施時期について見通しが立てられない状況にある。調査実施を2021年度に延期することも含めて、慎重に対応策を検討することと致したい。 OP村については、前回の世帯悉皆調査からの変化を検討するのに適した方法を検討する。上述の事情もあり、現時点では、2021年度以降に抽出調査を実施する方針である。 最終年度(2022年度)には、現地において補足調査を実施するとともに、研究成果のとりまとめを行う。都市化と工業化の進展により、農業労働力が不足する中で大きく変化するミャンマー農村の社会経済構造の変容の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、代表者の海外出張を二度計画していたが、一度の出張となったため、次年度使用額が生じた。 翌年度分と合わせ、主に現地調査に支出する計画である。
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